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2008-09-13 09:59

(連載)外交政策の一環としてのODAの戦略性(4)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 1992年以降だけでも、日本は、地球的規模の諸課題解決のために、次のような数多くのイニシャテイブを発表してきた。すなわち、
1992年の地球環境イニシャテイブ
1993年の中米支援民主開発パトナーシップ・イニシャテイブ
1994年の人口・エイズ・イニシャテイブ
1995年の途上国の女性支援イニシャテイブ
1997年の地球温暖化対策途上国支援イニシャテイブ
1998年の国際寄生虫対策イニシャテイブ
2000年の沖縄感染症対策イニシャテイブ
2002年の成長の為の基礎教育イニシャテイブ
2002年の東アジア開発イニシャテイブと持続可能な開発のための環境保全イニシャテイブ
2003年の日本水協力イニシャテイブ
2003年の対アフリカ協力の5年間(2005~09)100億ドル積み増し計画
2005年の対アフリカ支援3年間(2005~07)倍増計画
2005年の防災・災害復興5年間(2005~09)25億ドル以上支援計画
2006年の3年間(2006~08)100億ドル開発イニシャテイブ
2007年の21世紀東アジア青少年大交流計画
2007年のエネルギー協力イニシャテイブ
2008年の100億ドル地球温暖化防止福田イニシャテイブ)
2008年の地球環境ファシリテイ(GEF)への資金的・人的貢献
2008年の世界エイズ・結核・マラリア対策基金への資金拠出

 わが国は、米国や他の有志連合の主導の下で国際的に合意された政策目標をその外交政策の一環として受容するだけでなく、自国の指導力を発揮して、逆にわが国の自主的外交政策目標が国際社会で評価され、世界的に合意された政策目標になるよう、今後一層努力することが必要であり、そうすることが国際社会においてわが国が名誉ある地位を確保すること(例えば、安全保障理事会の常任理事国になること)にも貢献すると考える。同様に、わが国のODA政策目標が国際社会で受け入れられ、世界のODA政策目標となるように、常日頃国際社会に働きかけなければならない。そのためには、小切手外交だけでなく、明確な理念、政策に基づいた外交を心がけ、二国間外交だけでなく、多国間外交を強化する必要がある。

 さらに、従来からわが国は国際紛争や途上国における国内紛争について、当事国や当事者勢力が相互の協議を通じて解決すべきであって、武力による解決は最終的な解決にならないのみならず、再び紛争をもたらす要因ともなりうるとの信念で、国際連合を通じ、あるいは有志連合を通じて、当事国や当事者勢力に働きかけてきた。武力的解決よりも外交的解決ないし当事者間の協議による紛争解決を重視してきたこの日本の外交努力が、常に成功したとはいえないが、多くの国々では、日本のこの外交姿勢は高い評価を受けている。このような紛争の外交的解決に必要な知的貢献、資金供与、人的貢献は、わが国のODA政策の一環として、今後も一層充実させる必要がある。

 核実験の包括的禁止条約、核・生物・化学等大量殺戮兵器の禁止条約の制定を通じた「核戦力なき世界」の構築は、世界で唯一の原爆被爆国としてのわが国国民の戦後一貫した外交目標であり、その堅持が期待される。この点、先週発表されたNPT条約に加盟していないインドに対して、核燃料・物質・技術の移転を例外的に認めた核物質供給国の決定は極めて遺憾である。町村官房長官の「大局に立った」政治的決定には疑念を持たざるを得ない。かって核爆弾実験をした中国、インド、パキスタンに対して、ODAの供与を停止したわが国は、今後もこの政策を堅持すべきである。(つづく)
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