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2008-09-12 11:03

(連載)外交政策の一環としてのODAの戦略性(3)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 わが国の外交政策は、わが国の国際的地位、国際社会がわが国に期待する役割および国民の総意に基づいて形成すべきであり、その外交政策に基づいた外交手段の一つとしてODA政策・戦略を樹立することが不可欠である。従来、わが国の外交政策は、日米同盟という枠組みの下で、米国の外交政策との連携を重視してきた嫌いがある。今年11月には米国の大統領選挙があるが、いずれの政党が勝利しようとも、今後のわが国の外交政策は、米国のみならず、G8諸国やEU諸国、アジア・アフリカ等途上国、特に中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ等新興国の対外政策、対日政策を十分に勘案して、わが国国民の目からのみならず、諸外国の政府、国民から見ても「自主的」と評価されるような外交政策を樹立しなければならない。諸外国との緊密な協議に基づいて、かかる政策を着実に実行し、国会の場で検証していくことが不可欠である。

 わが国のODA政策は、このような自主的外交政策達成手段の一環であり、他の政策手段(貿易政策、国際投資政策、国際技術移転政策、国際金融政策、環境協力政策、文化交流政策、難民受け入れ政策、安全保障政策等)との整合性を担保して、その期待されている機能を効果的に発揮することが肝要である。
人口問題の解決、地球環境の保護・保全、HIV/AIDS等感染症の抑制・絶滅、貧困の撲滅、人権の尊重と人間の尊厳の確保、国内紛争の解決、世界平和の維持・回復等、一般に地球的課題と呼ばれている課題の解決は、わが国の自主的外交政策の最優先目標として、今後も掲げていかなければならない。これらの地球的課題の解決は正に地球益の増進であり、地球益の増進こそ、経済大国、政治大国、人道大国、平和協力国家としてのわが国の国益に資するものであり、わが国の国際的責務であると考える。

 1998年以来わが国は、1994年の「人間開発報告」で国連開発計画(UNDP)が世界的に訴えた「人間の安全保障」の確保をわが国の外交政策の基本的目標として、二国間、多国間の場で位置づけてきた。国内的には、1992年制定の国連平和維持活動協力法、1992年に閣議決定した「ODA大綱」、2003年の「新ODA大綱」が、またJICAやJBICなどのODA関連諸機関が、この「人間の安全保障」プログラムの充実に努めている。国際的には、国際連合事務局に「人間の安全保障基金」が1999年に設立され、国際機関を通じたその活用が世界的に広がってきている。なお、筆者が主査となってとりまとめた「『人間の安全保障基金』の評価制度の構築:カンボジアを事例として」(2006年、日本国際問題研究所)をご参照願いたい。(つづく)
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