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2008-07-12 10:25

揺れるASEANの内政不干渉路線

入山映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 2004年1月に創刊された『Asia Views』誌( http://new.asiaviews.org)は、アジアの識者の声を英語で世界に向けて発信する試みとして、極めてユニークな存在だ。インドネシアのTEMPOを始めとするアジアの主要なメディア5社の連携で、それに朝日新聞他の5社が協賛参加して、週刊で刊行されているオンライン誌だが、毎月ハードコピーでも入手できる。この試みが所謂クオリティ・ペーパーとして定着することを期待したい。

 ハードコピーの最近号(2008年6/7月)はASEANの新規加盟国4カ国(CLMVと略称されるカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)に焦点を当てた特集を組んでいる。冷戦まっさかりの1967年に設立された時は「反共」連合の色彩の濃かったASEANだが、1984年にブルネイが参加して6カ国体制になってから徐々にその独自色を強めてゆく。内政不干渉の基本的スタンスのもと、欧米からの明示・黙示の圧力を巧みな「アジア的」外交でかわしつつ、1995年から99年にかけて上記4カ国を加えた10カ国体制に落ち着いているのは、周知のとおりだ。

 就中、欧米からの圧力が強かったのが、ミャンマーの加盟を巡る問題であったことは記憶に新しい。それでもASEANはミャンマーを受け入れた。その後の同国軍政指導者たちの信じられない愚かな振る舞いに対しても、根気よく穏やかな対応を続けてきた。サイクロン被害救済に当たっても、頑な態度を取る同国政権が唯一窓を開いたのがASEANに対してであったのは、おそらくその結果だったと言ってよい。だが、余りといえば余りのミャンマー軍政の立ち居振る舞いに、苛立ちの念が発生するのもまた当然で、これまでの内政不干渉原則から一歩を踏み出して、なんらかの制裁措置も視野に入れるべきだとの声もASEAN内部から挙がるに至った。

 ASEANが「経済的統一体であるに留まらず、政治的統一体に踏み込むべきだ」という議論がそれである。これに対して「従来の内政不干渉原則を堅持すべきだ」との声もなお強い。そのあたりを「玉虫色」に取りまとめたともいうべきなのが、今回採択されたASEAN憲章案なのだが、はやばやと批准を終えた国がある一方、『Asia Views』誌今月号のシンガポールTODAY紙のタン氏のように、拙速な批准に慎重な声もある。経済重視、内政不干渉のASEAN路線は、それ故になし得なかったこともある反面、それ故になし得たことも多い。欧米流の人権外交、あるいは介入外交と一線を画してきたASEANがどの途を選ぶか。示唆に富んだ『Asia Views』誌の今月号である。一読をお勧めしたい。
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