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2008-02-05 12:08

(連載)洞爺湖サミットへ向けた日本の国際環境協力(1)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 わが国の国際環境協力は、以前本欄(2007年10月12日付け投稿410号)で指摘したとおり、いわゆる「箱物」協力とそれに関連した人材育成での協力が多かったものが、近年では、いわゆるソフト分野の国際協力も顕著となってきた。さらに、二国間協力から多国間協力への広がりも見えてきている。

 2005年8月に発表された中央環境審議会地球環境部会の国際環境協力専門委員会報告書「今後の国際環境協力の在り方について」は、今後の国際環境協力の取り組みの方向として、(1)世界的な枠組み作りへの戦略的関与、(2)アジア太平洋地域における環境協力の枠組み作りに向けたわが国のイニシャテイブを重視するとともに、(3)地方自治体を含めた多様な主体による国際環境協力への参画と国際環境協力実施体制の強化、を訴えている。

 さらに、本年冒頭の福田総理の施政方針演説や高村外務大臣の外交政策演説では、本年5月横浜で開催される第4回アフリカ開発東京国際会議(TICADIV)を控えて、アフリカ地域に対するインフラ整備、安全な水の安定供給、基礎・職業教育の拡充、感染症対策を中心とした保健等の(1)経済・社会開発、(2)平和構築協力の強化を表明している。この地域に対する環境協力、特に自然災害防止対策や地球温暖化対策への協力の一層の強化も、アフリカ連合(AU)加盟諸国から期待されている。これらのTICADIVにおけるわが国のイニシャテイブによる対アフリカ開発・環境協力に関する国際的合意は、当然ながら北海道洞爺湖サミットへと受け継がれていくことになる。

 このように、現在、国際環境協力におけるわが国の指導力が問われている。その指導力とは、単なる資金・技術協力の表明ではなく、今後の世界の平和と安定、地球環境の再生・保全、南北間・地域間の格差の縮小という21世紀の根本問題に対して世界各国が受け入れることの出来る中長期的ビジョンの策定・提案が出来るかどうかである。

 昨年12月にバリ島で開催された第13回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP13)は、本年1月から京都議定書における温室効果ガス(GHG)の削減約束期間が始まることもあって、気候変動に対する世界各国の取り組みを従来以上に強化することの必要性を訴えるとともに、ポスト京都(2013年以降)の新しい国際的枠組みに関する合意を2009年末にデンマークで開催予定のCOP15までに達成するという固い決意を表明した。COP13での中心課題は、GHGの削減と同時に適応、環境保全技術の開発・移転、森林破壊防止とこれらの国際的取り組みを支援する国際的資金メカニズムの設立であった。COP13は、さらに単に中長期的な気候変動防止に対する国際社会の強い決意を求めるだけでなく、特に一部の小規模島嶼国が現実に直面している自然災害による多大な被害の救済と、多くの途上国の貧困層にとって切実な問題となっている環境被害の防止を目的とした「気候変動に対する適応」問題に取り組んだ。(つづく)
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