国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2008-01-19 16:58

日米同盟といえども、絶対的な存在ではなくなる?

鈴木馨祐  衆議院議員
 韓国の大統領が変わり、アメリカ、台湾でも指導者が変わる。結果がどうあれ、日米同盟のあり方、北朝鮮問題、台湾問題と、日本の安全保障の根幹にかかわるような問題に必ずや直接の影響を与える、国際政治環境の変化が予想される。

 韓国大統領の交代は、これまでの推移を見る限りでは、日韓関係や地域の安定に非常なプラスの影響を与えていくであろう。日本と韓国は少なくとも現在においては、この地域で非常に近い価値観を共有するパートナーとなりうる、数少ない二カ国であり、経済的な発展度合いについても近い。今後この二カ国の関係が基本的には安定的に推移していくことは、東アジア地域にとって政治、経済的に非常に重要だろう。

 一方の台湾問題については、今後の推移を注意深く見ていく必要がある。もちろん急激な変化というものはないと思われるが、台湾海峡はわが国のライフ・ラインであり、そこをはさんでバランスしてきた中台関係が、その経済的相互依存度の高まり、軍事的バランスの変化と相まって、どのように変化していくのか、慎重に分析していく必要があろう。もちろん台湾において最も注目すべきは総統選挙であるが、今回の立法委員選挙において国民党が圧勝したことがどのような影響をもたらすのかは、現時点では判然としない。日本としては、現在の陳水扁政権の状況とは違う変化が必ず起こる以上、リスクの分析を急がなくてはならない。

 李登輝政権時代と陳政権時代とでは、その対日スタンスに違いがあったとはいえ、アメリカとの関係があまり良好でなかったこともあり、陳政権下の台湾にとっての日本の戦略上の重要性は増していた。ここ数年間、韓国、台湾の両国の対米関係は決して良好ではなかった。その状況はほぼ確実に変化するだろう。そして、アメリカ自体が次期政権において、アジア戦略に関してどのような方針で進んでいくのか、どこまでコミットするのか、明確でないのが現状である。

 冷戦が終結し、中国の経済力が増し、民主国家である韓国、台湾が経済的にもある程度の力をつけている現状にあっては、日米関係は絶対的なものではなく、東アジア地域の国際情勢の従属変数という、相対的な要素に徐々に変化しつつある。もちろん中国が引き続き共産党の一党独裁国家であり、安全保障上、経済上アメリカを脅かすという状況が続いている以上、日米同盟の価値がアメリカにとって劇的に不要のものとなる可能性は、まだまだ少ないとはいえ、日米同盟といえども絶対的なものではないとの意識を持って、現在の東アジア地域の地政学的要素のリスク分析をし、的確に行動する判断力が、これからの日本にとっては死活的に重要となるのではないだろうか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会