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2008-01-15 20:44

(連載)台湾の立法院委員選挙と両岸関係(1)

舛島貞  大学准教授
 今回の台湾の立法院委員選挙で、国民党が81議席を占め、27議席の民進党を大きく引き離した。この結果が、3月に予定されている総統選挙や今後の両岸関係に与える影響について、さまざまな憶測が流れている。中には、国民党の勝利を馬英九の総統就任、そして中国との統一への加速と結び付けようとする論調もある。確かにそのようになる可能性がないわけではないが、そのように性急に考えられるかどうか、疑問が残る。

 今回の立法院選挙は、小選挙区比例代表制を採用した最初の選挙であった。農村部を含めて基層組織が強い国民党にとって、この小選挙区制度は有利であり、また台北を中心に大都市部における支持を獲得している点で、比例代表制も国民党に有利であった。一票の格差の面で優遇されている原住民社会、金門、連江県においても、国民党が有利であることは客観的条件からして自明であった。このように、選挙制度でそもそも国民党が有利であったことは自明であった。だが、これほどの大差がつくとは、民進党も予想していなかったのではなかろうか。

 では、この民進党の惨敗の原因はどこに求められるのであろうか。上記のような国民党のもつ組織力、選挙制度の改変に伴う問題のほかに、有権者の投票行動が民進党、特に陳水扁政権への不信任、あるいは陳水扁自身に対する批判に基づくものだ、ということが重要だろう。陳水扁政権への事実上の不信任票を投じたい有権者の動力が民進党の「惨敗」へと結びついた、と考えられるのである。なお、資金の動きも看過できない。今回の選挙と3月の総統選に向けて、国民党は党産を積極的に売却し、資金を多く獲得した。それだけに、資金面でも選挙戦を有利に運ぶことができた面がある。民進党は、資金集めに苦しみ、活動自体が滞った。

 だが、注意すべきは、比例代表では国民党の20に対して、民進党が14を獲得しており、「惨敗」の度合いは、小選挙区において顕著だということだ。この点から、小選挙区にした結果、組織力の強い国民党の強みがいかんなく発揮されただけに過ぎず、得票数の比率と得た議席の比率は異なるという観点もある。このほか、投票率の低さを問題にする見方もある。今回の選挙では投票率が6割を割り込んだ。これは、台湾の選挙史上きわめて少ない数字である。低い投票率なら組織票が強い政党に有利であることは周知のとおりである。総統選挙ともなれば、投票率は8割を超える。そうなれば民進党が再び勢いを取り戻すという分析もある。(つづく)
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