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2008-01-11 20:39

(連載)中国、韓国、インドの環境産業と日本の役割(3)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 アジア諸国では、初期段階における環境産業の発展は、環境悪化に対する政府の政策とこれら政策の遅れや不完全さへの市民の不満、の結果としてもたらされた。すなわち、政府および市民社会による「Command-and-Control (C&C)」アプローチに基づいて環境産業が発展した。しかしながら、経済発展による人々の所得の増大と、それにともなう人々の価値観の変化により、環境価値に対する認識が深まるにつれて、初期段階のC&Cアプローチは、市場における消費者の選好の変化と地球環境の変化を組み入れた「Community-Market-and-Regulatory (CMR) 」アプローチに着実に取って代わられてきた。

 国内の環境規制を回避するために、中国やアジア諸国に投資を拡大してきた日韓、欧米の多国籍企業も、一旦CMRアプローチが国内外で主流となってくると、厳しい国際競争市場で生き残りをかけ、ビジネス・チャンスを素早くものにするために、その急速な世界的展開の中で、生産・流通現場での環境保全を重視するようになった。また、このような動きは、結果としてこれらの国々の環境産業の発展を後押しすることになっている。さらに、世界各国において、政府の環境政策や多国籍企業の産業活動が、ますます市民社会の厳しい監視下に置かれるようになるに従い、国際協定・条約が整備され、国際貿易や国際投資のネットワークの拡大の中で、環境産業の発展が途上国でも真剣な政策課題となってきた。

 これら各国政府にみられる近年の努力は顕著であり、その結果、中国、韓国、インドでは、消費エネルギー単位あたりのGDPは急速に増加しており、1990年代の購買力平価でその推移をみると、中国で1.8米ドルから4.2米ドルへ、韓国で4.0米ドルから4.4米ドルへ、インドで3.3米ドルから4.7米ドルへといずれも改善を記録した。なお、既に高いエネルギー効率と省エネ産業構造への転化を誇る日本でもその期間に5.4米ドルから6.3米ドルへと僅かながら上昇している。これら三国は、従来から日本産業の高いエネルギー効率に注目しており、安倍前総理の訪中、訪韓、訪インドでも、福田総理の訪中でも、日本からの省エネ技術の移転・協力に対して多大の関心を示した。わが国は、これら三国のためのみならず、自国の国民の環境・健康保全のためにも、さらに世界の地球温暖化の防止のためにも、ギブ・アンド・テークの形でわが国の省エネ技術を移転し、これら三国における環境産業の発展に協力・寄与することが期待されている。(つづく)
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