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2008-01-09 12:28

連載投稿(1)中国、韓国、インドの環境産業と日本の役割(1)

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 昨年12月、バリ島にて国連気候変動枠組み条約締約国第13回会合(COP13)が開催され、京都議定書の第一次約束期間(2008-12年)終了後の地球温暖化防止のための温室効果ガス(GHG)の削減と適応に関する地球的枠組み設定について一定の前進があった。先進国では、EUのように京都議定書で採択された義務的削減数値目標の国別設定を主張した国々と、日本、米国のように削減数値目標の設定には前向きだが、国別義務設定には相変わらず消極的な国々があった。途上国は、以前と同様に、ベルリン・マンデートに従い、「共通だが異なる責任」原則に則り、途上国の義務的削減数値目標の地域別・国別設定には反対したが、中国、インド、ブラジルの主張に見るように、地球温暖化が世界のすべての国々にとって重大な問題であるところから、先進国の技術移転と資金協力に期待しつつ自国でのGHGの削減に一層積極的になってきた、という変化も見受けられた。

 このように先進諸国、途上諸国の地球温暖化対策に変化がみられた背後には、一方では自国において地球温暖化を含めた環境悪化が自国民の健康悪化にもつながり、次第に大きな社会問題、政治問題となって無視できなくなってきたことがあるが、他方では、アジア太平洋諸国にみるように、各国で環境産業・技術の発展が近年顕著に見られ、将来の自国の経済発展にとっての重要な戦略産業として位置づける政策が採られるようになってきたことを反映している、といってよいであろう。そこで、今回はアジア太平洋地域における二酸化炭素排出量が最も多い途上国である中国、韓国、インド等の環境産業の現状を観察し、この分野での日本の役割について将来像を描いてみたい。

 アジア太平洋諸国における環境悪化は、戦後急速に広がっているが、特に1970年代以降が著しい。2003年の水資源総量に占める年間取水量は、中国、韓国、インドでそれぞれ 18.7%、36.5%、39.7%であった。森林伐採量の増大、生物保護地域の減少等、天然資源の枯渇はいずれの国でも著しく、中国では砂漠化の進展による河川の水量の減退、土壌の劣化、黄砂の被害がますます深刻化している。またこれら三国では、経済活動の活発化、化石燃料消費の増大に比例して、大気汚染が急速に進展しており、二酸化炭素排出量は1990年において中国が24億171万トン、韓国が1億6520万トン、インドが6億7530万トンであったものが、2000年には、それぞれ31億800万トン、4億2700万トン、10億7090万トンへと急増している。その結果、酸性雨の広範囲に及ぶ降雨や呼吸器系統への悪影響が着実に広がっている。(つづく)
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