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2007-12-11 19:55

進む南北関係と韓国大統領選挙

武貞秀士  防衛省防衛研究所統括研究官
 12月19日の韓国大統領選挙に関心が集まっているが、北東アジアの今後を考えるとき重要であるのは、韓国と北朝鮮の経済協力が急速に進んでいることである。12月1日までの3日間、韓国を訪問した北朝鮮の金養建・統一戦線部長らを含む訪問団は、韓国の統一部長官、国家情報院長らと協議し、第二回南北首脳会談で合意したことを履行すること、南北経済協力共同委員会の運営方法などで合意した。大宇造船所で統一戦線部長は「大宇造船所の繁栄を祈念します」と記帳し、平壌にもどったあと、「すべてがうまくいった」と言ったという。10月の首脳会談後、2か月の間に首相会談、南北赤十字会談、国防相会談と矢継ぎ早に南北会談がおこなわれた。

 南北関係改善は急ピッチである。今年はじめから9月までの南北間の交易は12億3千万ドルに達し、12・7パーセント増、昨年の朝中貿易の16億5千万ドルに迫る勢いである。10月4日の南北首脳会談で南北鉄道の運転、開城市への韓国民の観光、韓国が北朝鮮に造船所を建設することなどが決まっており、南北交易量は右肩上がりの勢いが続く。不透明な要素もある。例えば、南北関係の緊密化は、複雑な構造を北東アジアにもたらしつつある。南北首脳会談で北朝鮮は韓国に対して資源開発の特権を付与することを約束したから、北朝鮮の資源開発で先行している中国と、後発の韓国の間で競争は激しくなりつつある。中国の焦りを計算しているかのような北朝鮮の対韓接近は、金正日の「対中韓・等距離政策」といえるものだ。60年代以降の金日成の「中ソ等距離外交」をほうふつとさせる。

 いま、韓国の対北政策の責任者である国家情報院長、統一省長官と、北朝鮮の対南政策の責任者である統一戦線部長が、今後の南北交流の方向を話し合う枠組みが出来上がったのだから、朝鮮半島は統一にむけての胎動が始まったとみるべきだ。それに、米韓同盟は韓国の自主性を高める方向にあり、2008年末には在韓米軍は3年前の3分の2になり、2012年には、米韓連合司令部は解体される予定である。南北住民の自由な往来、手紙のやりとりはなく、南北の経済規模格差は33対1ともいわれ、38度線では双方の軍が対峙し続けている。統一へのロードマップはまだ見えないが、南北経済交流と政策決定者の相互認識を見る限り、南北は2つの政府をもったまま、統一に向けての、なだらかな「連合」という状態に向かって歩んでいるように見える。周辺諸国にとっての関心は、この南北関係改善の流れが、韓国の次期政権でどうなるかということだろう。
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