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2007-12-07 17:38

連載投稿(1)日本はもっと自信を持って発言せよ

河東哲夫  Japan-World Trends代表
 先週、「定点観測」で北京に行ってきた。ある中国人の日本専門家が日本の努力不足をなじるかのように、僕に言う。「河東さん。日本にとって中国は貿易相手ナンバーワンでしょうが、中国にとっての日本の地位はどんどん落ちているのです。日本は貿易相手としては米国、EUは言うに及ばず、近いうちにASEANにさえ抜かれてしまいますよ」と。僕は中国での日本の順位が落ちることが罪だとも何とも思わないが、一応反論をしておいた。「そりゃ、日本の対中投資が一段落したためもあるでしょう。これまで中国に移転した日本企業は機械設備を日本から大量に輸出してきましたが、それが一段落したんでしょう。ベトナムに投資するブームも始まっていますし」と。

 「ベトナムへの投資ブーム」と聞いただけで、相手が心配そうに眉を曇らせたので、僕はここでやめておく。だが更に言おうと思っていたのは、こういうことだ。「ASEANと中国の間の貿易が増えているのは、むしろ喜ばしいことです。地域の安定と繁栄に貢献するでしょう。それに、ASEANと中国の間の貿易のかなりの部分は、実はASEANに出ている日本企業の対中輸出でもあるのです。広州などに立地した日本の自動車工場へ向けて、ASEAN、特にタイに立地した日本の自動車工場、部品企業から車台や部品の供給が始まっているのです」と。

 僕は、ここらで日本社会のムードを少し長調に転調させたらいいと思う。これまでは日本はダメ、中国や韓国には追いつかれ、アメリカには見捨てられ、新聞には日本の大学生の知能はチンパンジーの子にも劣るなどと書かれ、僕の教えている学生も意気が上がらない。しかし世界には少し潮流が変化する兆しが見られる。たとえばカーネギー財団のアルバート・ケイデルという専門家は、11月のフィナンシャル・タイムズで「中国経済はこれまで思われてきたより40%は小さいと考えなければならない」と述べているが、それは我々が中国に行ってみて受ける実感と合っているし、これまで日本のODAや資本進出が契機となってアジアで創出されている付加価値の総額を算出してみたら、大変なものだろう。別にそれを日本に返せというのではなく、日本はもっと自信をもってアジアの安定と繁栄確保に向けて発言をしていけばいい。(つづく)
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