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2007-11-14 10:52

連載投稿(3)民間主導の民主化支援機構を設立せよ

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 わが国政府は、途上国での人権蹂躙が明白で、民主化運動がその政府により暴力的に抑圧されており、国連安全保障理事会による「人道的理由での軍事介入」決議がある場合でさえ、平和憲法第九条の制限により、世界の他の善意ある国々に参加して、自衛隊の派遣をできない状況にある。この面での国際協力は大幅に制限されているのが現状である。もちろん、国際社会による軍事介入が途上国の民主化促進に本当に貢献するかどうかは慎重に討議しなければならないし、平和憲法を有するわが国は非軍事的な形での国際協力を主体とすべきだとのわが国の支配的な世論を考慮しなければならないであろう。小生も参加した1999-2000年の日米共同研究「人権擁護と環境保全のための国連能力の強化」(日本国際問題研究所/コロンビア大学東アジア研究所、2000年)では、日本政府の政策再考を促す意味で民主化促進と自衛隊派遣との関連については提言を考慮したが、当時の日本政府内の強い反対でこの提言の語調を修正したことを覚えている。
 
 わが国政府による対途上国民主化支援活動については、外務省のODA白書(2006年)で次のようなものが紹介されている。まず、制度作り支援としては、パレスチナで実施された民主化研究支援セミナーや、ブータン、インドネシア、パキスタン、パレスチナ、フィリピン、ベトナム等で実施された行政支援などがある。選挙支援については、無償資金協力と技術協力で、アフガニスタン、ハイチ、ペルー、イラクなどで実施されてきた。このほか、市民社会の強化や女性の政治的参加の拡大なども実施されている。本年2月外務省は、久しぶりに、「自由と繁栄の弧を目指して:日本の人権、民主主義外交の新たな展開」というシンポジウムを国連大学で主催し、途上国への本格的な民主化支援へ漸く重い第1歩を踏み出した感があるが、今後はその強化を願いたい。その意味で、来年2月に予定されている途上国NGOや国際機関が参加する民主化支援国際シンポジウムに期待したい。

 また、わが国のNGOによる対途上国民主化支援活動としては、次のようなものがある。1996年に日本国際問題研究所が「東アジアの民主主義」シンポジウムをワシントンで開催し、2002年に尾崎行雄記念財団、ADP(民主化・平和構築支援)議員の会、米日財団が「議会とNGOの連携による紛争解決・民主主義支援」シンポジウムを憲政会館で共催した。また、アジア民主的ガバナンス推進会議(ADG)は2004年にカンボジアの首都プノンペンでカンボジア開発人権推進協会と「カンボジアにおける民主化促進」ワークショップを共催したほか、モンゴルやタイでも民主化に関するワークショップを開催した。

 このような状況の中で、途上国の民主的ガバナンスを側面から支援するためには、わが国自身で途上国における民主主義についての意識向上を図る各種の振興策を実施するとともに、国内外で民主化支援を行なうNGOへの助成を目的とした民間主導の民主化支援機構の設立が急務である。本機構には、市民社会の自発性に基づく民間機関として、中立性・独立性を維持しつつ、次世代を担う青少年をはじめとする幅広い市民から会員を募ることにより、日本国民の民主化支援への参画を促進する役割を果たすことが期待される。(つづく)
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