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2026-07-08 01:28

(連載1)国民総動員法に続く中国の域外支配法「民族団結法」の危険

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 今回は、中国がこのほど施行した「民族団結法」の危険性についてみてみたいと思います。日本では、「20社の軍民両用物品の輸出禁止」ばかりを問題にしていますが、私は、この民族団結法の目くらましでそのような経済的な内容しかしていないと考えております。その様に見れば、この「民族団結法」の問題点がより際立って見えてくるのではないでしょうか。とりあえずまずはどんな法律なのか見てみましょう。

 中国の「民族団結進歩促進法(一般に『民族団結法』とも呼ばれます)」は、2026年3月に可決され、2026年7月1日に施行されました。この法律は、中国政府の説明では「中華民族共同体意識を強化し、民族の団結と国家統一を推進するための法律」とされています。一見すると、多民族国家における民族融和や差別禁止を目的とした法律のように見えます。しかし、実際の条文を見ると、その目的は単なる民族差別防止ではなく、「中華民族共同体意識(中?民族共同体意?)」を国家全体に浸透させることに重点が置かれています。この概念は、現在の中国共産党が最も重視している国家理念の一つであり、「56民族は一つの中華民族であり、中国共産党の指導の下で運命共同体を形成する」という考え方です。

 法律では、中国共産党による民族政策を法律上の義務として位置づけています。そのため、政府機関だけでなく、学校、大学、企業、宗教団体、インターネット事業者、家庭教育に至るまで、この理念を普及させる責任を負うことになります。教育分野では特に踏み込んだ内容となっています。幼少期から標準中国語(普通話)の教育を徹底することが求められ、少数民族言語は使用を禁止されるわけではありませんが、公的教育では普通話が中心になります。また、中国の歴史観や国家観、中華民族共同体意識を学校教育や家庭教育で教えることが法律上求められています。文化や宗教についても、「中華民族の共有する精神的家園」を築くことが掲げられており、宗教の「中国化」が法律上の方向性として盛り込まれています。これにより、宗教団体は共産党の指導に従うことが一層強く求められると考えられています。

 インターネットについても特徴があります。ネットサービスやAI、ビッグデータなどを利用して民族団結を促進する作品や情報の発信を奨励し、「民族団結を妨げる」と判断される情報については規制対象となる可能性があります。条文上は表現が比較的広く書かれているため、実際の運用範囲は行政当局の判断に大きく委ねられる余地があります。さらに国際的に最も注目されているのが、この法律の域外適用(国外への適用)の規定です。法律には、国外の組織や個人が民族団結を破壊し、中国の民族政策に悪影響を与えた場合には法的責任を追及できるとする条項が盛り込まれています。中国政府は「主権国家として当然の立法権であり国際慣例に沿っている」と説明していますが、欧米諸国や人権団体などからは、中国国外での言論活動に対する圧力として利用される可能性があるとの懸念が示されています。(つづく)
 
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