アメリカによる唐突な対イラン攻撃は、同国の同盟国が、安全保障条約について深く考える機会ともなりました。目下、トランプ大統領が同戦争に非協力的な同盟国に不満を漏らす一方で、ピート・ベクセス国防長官に至っては、ヨーロッパやアジア諸国が米軍に‘タダ乗り’していると息巻き、アメリカへの忠誠を迫っています。イラン戦争への協力か、同盟解消か、の二者択一を迫るかのようなのです。
確かに、今日の軍事大国と中小国との間の非対称的な軍事同盟のスタイルは、中世の封建契約に類似しています。封建時代には、封建契約によって主君となる側が臣下となる者に対してその領地を保障するかわりに、臣下の側も、戦時における軍事力の提供を約束していました。同体制は、軍事力の非対称性に従ってヒエラルヒーを形成するスタイルでありながら、保護・被保護関係を内包する相互依存的な集団的安全保障体制の一種であり、それ故に、主君の側の強い責任感と家臣の側の揺るぎない忠誠心が、備えるべき心得として求められたのです。アメリカの軍事力に自国の防衛を依存している点で、現代のNATOも日米同盟も同体制に近いと言えましょう。しかしながら、今日のアメリカと同盟国との関係は、凡そ以下の3点において封建制度との間に大きな違いがあります。
第一に、現代の安全保障条約は、攻撃力よりも抑止力の観点から締結されています。とりわけ、冷戦期並びに中国の軍事大国化の後にあっては、同盟国側の主たる目的は、ロシア(ソ連邦)や中国の軍事行動をアメリカの軍事力によって抑えることにありました。しばしば、戦後、‘日本国が侵略されなかったのは、憲法第9条ではなく日米同盟のお陰である’とされるのも、軍事同盟によって、大国間の軍事的均衡に自国の安全を組み込んだからに他なりません。つまり、同盟国側のメリットは、アメリカの抑止力による自国の安全保障にあったことになります。
第二に、核兵器の出現により、軍事大国の絶対的優位性は、1970年代以降、NPT体制の成立によりさらに強固に固定化されています。大国間の関係が核の相互抑止によって均衡すると同時に、軍事大国は、核の抑止力の独占により、核保有国からであれ、非核保有国からであれ、もはや何れの国からも攻撃される怖れが殆どなくなったのです。(つづく)
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