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2026-04-28 18:34

イラン戦争とヴェトナム戦争の共通点は「アメリカに消耗を強いて諦めさせる」ということだ

古村 治彦 愛知大学国際問題研究所客員研究員
 イラン戦争は停戦状態となって二週間以上が経過した。その間に和平交渉が行われたが、合意には至らなかった。現在は動きが見えない状況にある。アメリカのドナルド・トランプ大統領は暴言を発したり、引いてみたりと尻尾を掴ませないように、世界を煙に巻いている。和平交渉はいきなり代表同士が会って話すものではない。双方の事務当局、外務担当の職員たちが条件を話し合いながら、叩き台を作っていく。現在はその作業が進められているのだろうが、双方の最高幹部クラスの意向が全く嚙み合わなければ、叩き台作り作業も難航するだろう。

 アメリカとしてはイランの核兵器製造能力を完全に除去したいというところだ。イランは体制の継続保証が欲しいところだ。ここにイスラエルの意向も絡んでくるので、話が複雑になる。また、現状では、イランのほうが有利な立場を保持しているという感じになっている。総合格闘技の試合を見た人は多いだろうが、体格が大きくて強い選手が相手を打撃で倒して上から覆いかぶさったところで、倒された選手が下から関節技や首の絞め技(チョークスリーパーなど)でかえって相手からギヴアップを奪うということがあるが、現状はそれに近い。アメリカとイスラエルの大規模空爆で、イランは大きな被害を受けた(最高指導者アリ・ハメネイ師まで殺害された)が、世界にとって重要なチョークポイントであるホルムズ海峡を封鎖する(絞め上げる)ことで、世界経済とアメリカ経済に悪影響を与え、対抗している。アメリカは戦闘(battle)で勝っているが、戦争(war)には負けているという状態になっている。

 このような状況で、イランは簡単に妥協しない。そして、アメリカに消耗を強いて、嫌気がさすまで長引かせることによって、かえってアメリカから妥協や良い条件を引き出すという目論見を持っている。これは、大国と小国の間や宗主国と植民地の間などの、非対称的な戦争において採用されてきた戦略である。事態を打開しようとして、更に強硬な作戦、核兵器の使用や地上軍の投入を行えば、泥沼(quagmire)にはまり、事態は悪化してしまう。そのこともヴェトナム戦争が示している。イラン戦争は開始されるべき戦争ではなかった。そのことはトランプ以外のトランプ政権とアメリカ政府の最高幹部クラスは分かっていたが止められなかった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の懐柔策と操縦が見事にはまり、トランプ大統領はイラン攻撃を決定した。

 トランプは長所である、自分の言葉や過去の行動に縛られない、無反省と定見のなさで、ピート・へぐセス国防長官当たりに開戦の責任を押し付けて更迭し、和平合意にゴーを出すべきだ。そして、外交政策はJ・D・ヴァンス副大統領に任せるようになって欲しい。その代わり、アメリカと世界は、トランプをあやすために、最高の栄誉や賞賛を与えるということはやるべきかもしれない。ノーベル平和賞を与えるのもその一つの方策かもしれない。
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