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2007-10-04 10:07

対外政策構想における「連続」と「非連続」

櫻田淳  東洋学園大学准教授
 日本においては、対外政策構想とは、どれだけの重みを持つものなのか。内閣総理大臣の顔触れが次々と替わった1990年代はともかくとして、外務大臣の顔触れは、総理大臣に比べても頻繁に変わっている。2000年以降に限っても、小渕恵三、森喜郎、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫の五代の内閣で延べ七名の外務大臣が着任している。こうした事情は、対外政策構想における「連続」と「非連続」の意味を考えさせる。

 たとえば、麻生太郎元外務大臣が示した「自由と繁栄の弧」構想は、それが発表された折には相当な反響を呼んだものであるけれども、この構想が後任である町村信孝、高村正彦の両外務大臣にも引き継がれたかは、判然としない。「自由と繁栄の弧」構想は、相応のインパクトを持ったものであり、それが麻生太郎氏の個性と結び付けて議論された故に、後任の外務大臣には、そのまま引き継ぎ難いものであるという事情は、容易に理解できよう。しかし、日本の対外政策構想が特定の政治家の占有物の類のものとして扱われるのは、果たして好ましいことであるといえるであろうか。

 小渕恵三執政期に展開された対外政策には,「太平洋フロンティア外交」構想と「シルクロード外交」構想の二つの柱が設定されていた。小渕内閣期の二つの対外政策構想の趣旨や発想は、「自由と繁栄の弧」構想にも引き継がれたところがあるのかもしれないけれども、この二つの構想それ自体は、既に忘れられているであろう。「自由と繁栄の弧」構想もまた、麻生氏の政治上の復権が成らなければ、忘れられた構想になるのであろう。

 現在、日本の対外政策の文脈で要請されていることの一つは、その対外政策の意味を内外に向けて適切に説明することである。それは、「広報活動の重要性」という次元に留まらない射程の中で進められるべき取り組みである。こうした取り組みに際して、対外政策構想における「非連続」が露わになるようなことは、決して芳しいものではないであろう。一人の大臣、一つの内閣に留まらない射程を持つ対外政策構想の「連続」を説明する努力が、今や求められているといえよう。
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