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2024-11-16 19:00

アメリカは民主主義を維持できるのか?

岡本 裕明 海外事業経営者
 トランプ氏が圧勝し、議会も共和党がしっかり押さえそうなアメリカをみて私は「民主主義の雄、アメリカ」の見方を変えるべきか悩んでいます。悩んでいるというのは昨今の民主主義のあり方について議論百出で、新しい民主主義のあり方を模索している中でアメリカがその道を示すことができるのか気になっているのです。ご承知の通り、世界は過半数が権威主義になっており、民主主義を標榜する国は減りつつあります。民主主義国家は権威主義国家とイデオロギーの相違から対立姿勢を強めるわけですが、政治思想の相違ですから双方が話し合いをして簡単に解決できるものではありません。むしろ、「臭い物に蓋をする」発想で核心には触れず、経済や人流といった双方にメリットあるものを部分的にうまく制御しながら推進してきたとも言えます。

 ところで民主主義国家と対立するのは何かといえば権威主義ではなく、専制君主制国家であり、遠い昔はこの形態が主流でありました。現代でも専制君主制を取る国は残っています。その多くは中東でサウジアラビアやアラブ首長国連邦など国王制や首長制が残っている国々です。権威主義国家は民主主義と専制君主国家との間という位置づけで学術的には必ずしも対立関係ではありません。さて、今回トランプ氏は相当のパワーを持って大統領に就任します。その際、得意とする二国間ディールで様々な交渉を進めていくはずですが、政治大国である中国、ロシア、及びEUとどのような交渉をし、外交関係を築くのか大きな着目点になります。 トランプ氏は選挙では圧勝でしたが、実質的には分断化されたアメリカをうまく利用して選挙戦を制したと考えています。つまりいつの間にかアメリカは一つのイデオロギーではなくなってしまい、古い民主主義の思想である51:49の理論のもと、51が49を支配するという発想です。

 氏のこの強い発想の根源はビジネスマンである背景があるのだと考えています。事業者にとって株主の権限を論じる際、概ね数や%の理論で収れんするからです。ビジネスや法律、あるいは選挙を含む物事の判断の過程で数の理論は今でも健在であり、49のグループは泣かねばならないのです。ビジネスでは泣かされたグループは諦めて違うチャレンジをすればよいという逃げ道があります。地方選挙で自分が支持しない人が知事なり首長になれば他県や他の州に引っ越すオプションもあります。ところが国家の場合には他国への移民しか手段はなく、これは容易ではないのです。たとえば香港や台湾問題をみると富裕層にはどこか他の国に移住するという選択肢があり、事実、そのような政治問題が顕在化するたびに移民による出国ラッシュが起きました。ただ、大多数の庶民はそんなことは到底できず国家の変化に耐え忍ぶしかないのです。トランプ氏の施策は私には一歩間違えれば権威主義になるのではないかという危惧があります。Great America AgainというGreatは何を指すのかであります。50年代や60年代の強かった時代の白人至上主義的なイメージを持つならこれは多くのその後の移民層、例えばヒスパニックからアジア系、インド系やアフリカ系までを人たちの権利には光が当たらないことになります。

 これは移民国家を標榜してきたアメリカとしてはある意味方針の変化のように感じるのですが、そのような指摘は、私が気が付いていないこともあるのか、あまりお見掛けしないようです。トランプ氏のアメリカが議会のコントロールも利用し、権威主義的な施策を施すのであればこれは非常に大きな問題になります。民主主義は何処に行く?であります。カナダを見ていてもアメリカ追随は望む望まざるにかかわらずそうなってきています。韓国もアメリカの方針にしっかり食いついています。これでは世界は権威主義対権威主義の対立軸になりかねず、日本はその枠組みに入るのか、どうするのか悩ましい判断を迫られることになります。アメリカに歯止めがあるのか、民主党は勢力としては厳しい状況になっているものの一定のブレーキ役になれるか、気になるところであります。
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