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2024-10-31 08:35

魅力的な企業が不足している韓国の株式市場

真田 幸光 大学教員
 ここ20年余り、韓国経済で大きな比重を占めてきた三星電子、現代自動車のような大企業に追随する第2、第3のグローバル企業を育成出来なかった、未来成長企業の不在が韓国では定着してしまっている。三星電子の独走が慢性化し、半導体株にピーク説が囁かれる度に韓国の株式市場ばかりか経済全体まで揺らいでしまい、更に後進的な企業支配構造、現在論議を呼んでいる金融投資所得税など株式市場が低評価される要因も依然として存在する。こうしたことが、外国人投資家の注目を浴びない背景となっている。

 韓国証券取引所によると、韓国株で時価総額1位の半導体大手である三星電子の株価は、今年に入り年初来約21%下落している。悲観的な業績見通しを受け、外国人が同社株を集中的に売り越しているからである。9月の月初から20日までの外国人による売り越しは5兆9,210億ウォンに達していた。同社の第3四半期(7~9月)の業績もスマートフォンやパソコンの需要低迷などで期待を下回るとの見方が相次ぎ、韓国証券業界10社は9月に同社の目標株価を10~26%引き下げた。また、MSCI エマージング・マーケット・インデックス(新興国指数)に組み入れられた産業の割合が20年間で大きく変わったことも、海外の機関投資家にとっては、韓国の株式市場の魅力を低下させる要因となった。2004年にはMSCI同指数に占める韓国株の割合は18.67%となっていたが、現在11.67%に低下している。同期間、IT銘柄の組入比率は16.69%から24.24%に上昇したが、三星電子の不振を補完すべき韓国の大手IT企業(カカオ、ネイバー)は、経営権問題、新規事業不在などで成長が停滞した状態となっている。
 
 この韓国とは異なり、台湾、インドなどは株式市場を代表企業が入れ替わる好循環が起き、経済に活力を吹き込んでいる。台湾経済は新型コロナウイルス感染拡大を契機として、アップルの最大の生産委託先で一時は、「台湾の三星」と呼ばれた鴻海精密工業から人工知能(AI)用半導体の受託生産企業である台湾積体電路製造(TSMC)に成長動力がシフトしたことは明らかである。一時、鴻海は台湾の国内総生産(GDP)の22%を占める圧倒的なトップ企業となったが、コロナ後はTSMCにその座を譲った。TSMCの株価は今年、年初来23%急騰し、台湾株の上昇をけん引している。台湾経済を主導する企業が鴻海からTSMCに変わり、対中依存度が低下したことも、台湾経済の体質改善に役立った。台湾は、国家としてもイノベーション企業の育成にも積極的である。台湾は法人税率(20%)が韓国(24%)より低く、様々な減免で実効税率も低い。TSMCのような先端未来産業に対する政府の規制が相対的に少ないことがイノベーション企業育成には役立っているとされている。
 
また、インドは中国本土より人口が多くなり、堅調な内需をベースに流通企業や金融業などが新たに産業を主導している。中国本土の成長戦略を模倣したモディ政権の製造業育成政策である、メイク・イン・インディアの後押しで中国本土のような成長を再現させる可能性が高いと見られている。今後も建設、金融などの分野で新たな企業が登場するのではないかとも見られている。内需市場が堅調なインドでは、石油・通信大手のリライアンス・インダストリーズ、財閥タタ・グループ所属のIT企業であるタタコンサルタンシーサービスの株価が年初来それぞれ13%、12%上昇した。これら有望株だけでなく、インドの金融大手ICICI銀行が時価総額4位に浮上するなど株式市場の躍動性が高まった。」さて、こうした韓国での見方を見ていると、日本も株価を意識した経済・産業戦略を考えていくのであれば、「次世代の成長産業が不在である。」ことを解消する必要があり、石破新政権には、「先ずは成長戦略をしっかりと構築、その中で、新たな成長産業、成長企業を育成していく。」という戦略の具体策のある構築を期待したい。
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