国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2024-10-10 11:30

韓国の自営業廃業者増加について

真田 幸光 大学教員
 韓国では高齢化時代に入り、50代後半に退職する人たちが起業して自営業に続々と参入していると伝えられています。こうした中、2023年廃業を届け出た事業者は、2006年に関連統計を取り始めて以来最多となる98万6,487人となりました。「自営業廃業者100万人時代」の主因として、マーケットライフサイクル(ビジネス周期)の短さやフランチャイズブランドの過剰が韓国マスコミなどでは盛んに指摘されています。フランチャイズによる起業を目指すのは事業経験が不足している人たちが大半となっていますが、2~3年ごとに変わってしまう流行によって、栄枯盛衰が起き、突然ビジネスが回らなくなり倒産してしまうと言う現象が見られています。韓国国内のフランチャイズ業界関係者は、「短命フランチャイズへの備えが不十分な起業家が、寿命が短いフランチャイズ加盟店をオープンし、廃業に追い込まれている。」との見方を示しています。
 
 こうした見方が強まる中、韓国の主要紙の一つである朝鮮日報が公正取引委員会の加盟事業情報資料などを分析したところによると、フランチャイズブランド全体の80%に達する外食ブランド数は2019年の4,792から昨年は9,934となり、4年間で2倍以上に増えていますが、2019年に651店舗に達したあるホットドッグフランチャイズ店は、現在、約3分の1の191店舗に減ってしまいました。短命フランチャイズ現象はリタイア世代が自営業に挑戦する上で新たなリスクとなっていると韓国では見られています。フランチャイズで一獲千金を夢見た訳ではないとするリタイア世代が多いものの、それでも廃業が増えています。また、廃業はしないまでも、当初予想よりも収益は遥かに収益が少ないというフランチャイズビジネスも多いとされています。
 
 こうして、韓国の自営業関連統計の数値はより悲観的な方向へと向かっているとされています。統計庁によれば、本年7月の自営業従事者は572万1,000人で前年同月に比べて6万2,000人減少しました。自営業者の減少傾向は2月から6カ月間続いており、6カ月連続での減少は新型コロナウイルス感染拡大以降初めてとなってもいます。 自営業者は、「借り入れ→起業→経営悪化→借金→廃業」という構造が定着してしまっているとも見られており、韓国信用データの、「零細事業者動向レポート」によると、本年第1四半期の自営業者の貸出残高は884兆4,000億ウォンとなり、延滞額だけで15兆ウォンを超えてしまいました。こうして、限界に達した自営業者たちはやむを得ず廃業を選ぶとの悪循環に入っていると見られていると朝鮮日報は報じています。更に、統計庁によると、今年上半期に商売を止めた結果、「失業者」になった自営業者は1年間で20%以上増加したとも報告されています。
 
 流通業界はフランチャイズの栄枯盛衰のペースが以前より確実に速くなったと指摘しています。ソーシャルメディアに慣れた世代が消費市場の中心となり、流行の周期が短くなったと指摘しています。一方で、流行のスピードが速くなり、それにつれてまだ検証されていないフランチャイズが生まれ続けており、事業が得意ではない未経験の自営業者が窮地に追い込まれているとも指摘されています。人生が長くなっているとはいえ、しっかりと仕事を持てないと生きていく術を失い、長生きする意味を失ってしまいます。そうした意味で、韓国の50代以降の職場機会の発掘と廃業の減少は韓国にとっては、今後の重要なチェックポイントとなるかと思います。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会