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2024-02-28 01:47

ウクライナ問題のシナリオ作り

岡本 裕明 海外事業経営者
 ウクライナ戦争が3年目に入りましたが、メディアではウクライナの苦戦が報じられています。理由は欧米の支援が十分ではなく、弾切れになりつつあることが指摘されています。個人的にはゼレンスキー大統領の求心力低下がそれに拍車をかけているとみています。その中で、アメリカ大統領選が11月に迫る中、トランプ氏はウクライナ戦争を1日で終わらせると豪語していますが、それは支援のプラグを抜くという意味です。ゼレンスキー氏を世界が支援していたと思いきや、ここにきて四面楚歌になりつつある現状を踏まえ、ウクライナ問題のシナリオをそろそろ考えるべきではないかと考えています。戦争の講和は必ずしも戦争の終結、つまりどちらかがギブアップしなくても講和の準備は行われます。例えば第二次大戦においては1943年のテヘラン会議、45年2月のヤルタ会議、そして45年7月のヤルタ会議が戦後処理を巡る主要な3度の会議でその後、講和を巡る実務会議は数々開催されており、最終的にサンフランシスコ講和条約となります。これは対日本の場合で対ドイツの場合は政府が存在しなくなり、東西に分裂したこともあり、講和条約はないとされます。

 さて、ウクライナの苦戦については個人的にはゼレンスキー氏の人徳のなさにあったような気がします。戦争初期はさすが芸人出身だけあり、訴えるチカラやその熱意に世界が共感しました。が、途中からその温度は確実に下がります。理由は誰も言いませんが、明白です。それは彼が「クレクレ星人」だったからです。彼の主張では長期戦に於いては無理があったと言わざるを得ません。それは武器はくれ、支援はしてほしい、自分はロシアに一歩も譲歩しない、武器があれば勝てる、ロシア領には手を出さないと言い続けていました。「皆さんはロシアと交渉する気なのか?」という正論を振りかざし、西側諸国を張り付けの刑にしたのです。一方、西側諸国は最大限の支援をしたと思います。特にロシアへの制裁は厳しいものだったと思います。しかし、世界はアンチロシアの国ばかりではないのです。我々は西側先進国の一翼であるためにロシア制裁はロシアが苦しむはずだと思い込んだわけです。ところがインドが見事に裏切ったし、中国はロシアから好条件を引き出すことに成功します。更に当初はイランからの武器弾薬供給が主流だったものが北朝鮮を巻き込むことで一気に巻き返しを図り、今のプーチンは明らかに余裕すら見えるのです。

 トランプ氏はゼレンスキー氏に「休戦、講和をするか、支援打ち切りのどちらかを選べ」と迫るはずです。アメリカは資金的に十分すぎるほどの支援を行ったが、もはやこれ以上の余力はない、これがトランプ氏の明白なスタンスです。バイデン氏は支援しなくてどうする、と言いますが、勝てない戦争につぎ込む余裕はないというのがアメリカ的なドライな発想です。よって岸田氏が春にアメリカ公式訪問した際にバイデン氏から「キッシー、アメリカの代わりに〇兆円ほどウクライナ支援、よろしく」と言われる可能性は相当高く、岸田氏も無下に断れず一定の協力を惜しまないというのでしょう。高くつく訪米になりそうです。ですが、今の情勢で行くとバイデン/カラマ ハリスのコンビがトランプ氏に勝てる情勢にはない気がします。せめてハリスを変えてほしかったのですが、それこそ民主党が弾切れを起こしてしまったのです。ではゼレンスキー氏の国内人気はどうなのでしょうか?各種世論調査を組み合わせると22年2月の支持率が91%、23年10月が81%、23年12月が61%となっています。また2月8日に国民人気が高かったザルジニー総司令官を解任しており、これが影を落としている公算は高いとみています。仮に今、世論調査をやれば半数を切る4割台に低落しているとみています。また5月にあるべき大統領選挙を先送りしていることへの国内の不満もたまるはずでゼレンスキー氏に後はないとみるのが現在の趨勢かと思います。

 欧州諸国もゼレンスキー氏の失脚が予見されるなら支援交渉は停滞気味になるでしょう。個人的には大統領選挙は戦後まで引き伸ばすのではなく、早めにやるべきだと思います。そして世界をその政局に巻き込みながら切り口を変える必要が出てくるかと思います。ウクライナのNATO加盟問題はそもそもGDPの2%なりを支払える状態にない中でなぜ、NATO諸国がそこまでしなくてはいけないのか、という一歩引いたスタンスになる公算があります。トランプ氏もNATO加盟国に金を払っていない国がある、と不満をぶちまけているのでウクライナの加盟はそう簡単ではないとみています。最後に講和ですが、個人的にはやはり旧宗主国との争い以上のものではないと考えています。よって講和があったとしても比較的両国内の問題にとどまり、欧米諸国はロシアへの経済制裁は引き続きタイトなものとし、ウクライナは国家の再建を目指しますが、実態としてはインフラが相当痛み、住めなくなった地域も多く、再興は困難を余儀なくされるとみています。
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