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2023-03-24 13:40

南シナ海をめぐる中国とフィリピンの「暗闘」

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 南シナ海・東シナ海と言えば、中国と台湾の関係の悪化、つまり「台湾有事」ということが言われている。しかし、「第一列島線」といわれる内容に関して言えば、日本の南西諸島及び、フィリピンも入っているのである。中華人民共和国が、海域や島々の領有権を有すると主張してきた、いわゆる九段線に囲まれた南シナ海の地域について、フィリピンが国連海洋法条約の違反や法的な根拠がない権益の確認を常設仲裁裁判所に対して申し立てた仲裁裁判がある。2013年からフィリピンは中華人民共和国に対して警告を行ってきたが、中華人民共和国側が拒絶してきたため、2014年、フィリピンは常設仲裁裁判所に対してパネルを設置し、仲裁を要望した。そして、2016年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、九段線とその囲まれた海域に対する中華人民共和国が主張してきた歴史的権利について、「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」とする判断を下した。
 
・中国による九段線で囲まれた海域に対する歴史的権利等の主張は、国連海洋法条約に反するものであり、認められない。
・スカボロー礁、ガベン礁(北側の礁のみ)、ケナン礁(ヒューズ礁を含む)、ジョンソン南礁、クアテロン礁及びファイアリー・クロス礁は、いずれも「岩」であり、12海里の領海のみを有する(排他的経済水域(EEZ)及び大陸棚を生成しない)。
・南沙諸島の「高潮高地」はいずれも、国連海洋法条約121条3項で定める「人間の居住又は独自の経済的生活を維持すること」ができる海洋地勢ではなく、EEZ及び大陸棚を生成しない。
・ミスチーフ礁、セカンドトーマス礁及びスビ礁は、いずれも満潮時に海面下に沈む「低潮高地」であり、いかなる海洋権限も有さない。
となっている。
 
 中国は、この仲裁裁判の結果に対して「フィリピン共和国の一方的な申し立てにより設けられた南海仲裁裁判所(仲裁裁判所)が2016年7月12日に出した裁決に関し、中華人民共和国外交部は、その裁決が無効であり、拘束力を持たず、中国は受け入れず、認めないことを厳粛に声明する。」と発表している。ドゥテルテ大統領(前職)は、あまり事を荒立てずに、麻薬撲滅を行った。しかし、現在のマルコス大統領はそのようなことではないようだ。
 
「フィリピン沿岸警備隊は13日、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島のアユンギン礁付近で、海軍への補給任務中だった巡視船が6日、中国海警局の艦船からレーザー照射を受けたと明らかにした。乗組員の目が一時的に見えなくなったほか、危険な操船があったとして、警備隊は『主権の明らかな侵害』と非難している。中国外務省の汪文斌副報道局長は13日の記者会見で『抑制的』な行動により自国の主権を守ったと主張した。警備隊によると、艦船は緑色のレーザーを2度照射。巡視船の後方約140メートルに接近した。警備隊は『領土を守るため、プレゼンスを維持し主権を主張する』と声明を出した。」(2023年2月13日 21時4分 共同通信「中国艦船がレーザー照射 南シナ海、フィリピン巡視船に」https://news.livedoor.com/article/detail/23702930/)
 
「フィリピン外務省は14日、船舶による『攻撃的な活動』をやめるよう中国に求める外交文書を提出した。フィリピン沿岸警備隊は13日、南シナ海で中国海警局の船が妨害行為をしたと非難していた。6日に南沙(英語名スプラトリー)諸島のアユンギン礁にある海軍拠点への補給活動を行う船に対し、『軍事級のレーザー』を照射して妨害したという。同省のダザ報道官は、マルコス大統領と中国の習近平国家主席が1月上旬の会談で南シナ海を巡る問題の外交的な解決で合意したばかりであることに言及。『中国によるこのような攻撃的な行動は憂慮される問題で失望している』と述べた。同省はまた、中国海警局の行動はフィリピンの主権と安全保障に対する脅威で、フィリピンには排他的経済水域内で合法的な活動を行う権利があると表明した。在マニラ・中国大使館からは現時点でコメントを得られていないが、中国外務省は13日、フィリピン政府の非難に関する質問に、海警局は法にのっとって行動していると説明した。」(2023年2月14日 16時8分 ロイター「フィリピンが中国に抗議、船舶の『攻撃的な活動』巡り」https://news.livedoor.com/article/detail/23707522/)
 
 上記の判決に関して、フィリピンのドゥテルテ大統領は「戦争は選択肢にない」として、中国と二国間協議を開始するためにフィデル・ラモス元大統領を特使として訪中させると発表し、判決を不服とする中国側もこれを歓迎し、ラモス元大統領も受諾を表明した。ドゥテルテ大統領は就任後初の施政方針演説で南シナ海を「西フィリピン海」と呼ぶ一方、「中国海としても知られている」とするなど中国への配慮を打ち出した。同年10月20日、ドゥテルテ大統領と習近平・中国国家主席は南シナ海判決を棚上げして各方面の協力で合意した。しかし「棚上げ」というのは、後になって問題が発生するということになる。双方ともに、主権を主張するということになる南シナ海に関して、フィリピンが船舶を動かすことは当然のことである。国際仲裁裁判所がフィリピンの主張を認めているのであるから、中国は我が物顔で九段線を考えているかもしれないが、それは国際法では全く認められないということになるのである。
 
 そのフィリピンの巡視船に対して、軍事用のレーダー照射を行ったということになる。当然にフィリピンはフィリピンのEEZ内で経済活動を行う権利があるのであり、中国の独占権などはない。中国の国内法で勝手に何かを決めてもそれは国際法的には全く意味がないということになるのである。中国は、「国際法を完全に無視している」ということであり、そのことが国際的に非難される。しかし、そのような「国際法の無視」は、現在では「ロシアのウクライナ侵攻」に繋がるものであり、そのようなことは、台湾有事やフィリピン有事につながる可能性を示唆しているということになるのである。要するに「フィリピンも台湾のように大きな問題が出てきている」ということになり、中国はそのように軍事的な圧力をかけているということになるのである。
 
 では、今後どうすべきか。そもそも「軍事的な圧力の段階で、中国に制裁を加えるべき」ではないかということになるのであるが、そこまでする国が少ない。ロシアに対しても2014年のクリミア併合の時に経済制裁をしても、それで2022年のウクライナ侵攻を止めることができなかったという歴史を世界はどのように考えるのか。民主主義の国と、元社会主義の国というように分けて、その性質をよく見極めるべきであると考えられるのではないか。「国際法において予防的措置」が必要な事になるのではないか。
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