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2022-08-22 20:19

(連載1)核の脅威に直面する非核保有国とNPT

倉西 雅子 政治学者
 中国軍関係者の談として報じられたところによりますと、今般、ペロシ下院議長の訪台に対する‘報復’として中国が実施した軍事演習の対象には、日本国も含まれるそうです。実際に、日本国のEEZ内にある沖縄県周辺の海域にも、中国軍が発射した11発のミサイルのうち5発が落下しております。否が応でも米中間のみならず、日中間の緊張も高まっているのですが、戦争に発展する事態が想定されるからこそ、改めて考えてみるべき点があります。
 
 8月1日より、ニューヨークにおいてNPT再検討会議が開催されていますが、西のウクライナ危機に続き、東の台湾危機が発生している今であるからこそ考えてみる点とは、NPTの条文です。同条約の第10条には、脱退に関する以下の条文が記されています。「各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する・・・」
 
 以下に、国連安保理に対する3ヶ月前の通知という脱退手続きが記されているのですが、この条文から理解されることは、NPTは平時における条約であって有事、あるいは、軍事的衝突が懸念される状況下における適用は想定されていないという点です。考えても見ますと、同脱退条項は、当たり前と言えば当たり前です。何故ならば、物理的な力によって勝敗を決する戦争にあっては、兵器の能力が最大の勝利要因となりますので、一方にのみ絶対的な優位性を約束する兵器の保有、並びに、使用を認めると言うことは、合理的に考えればあり得ません。
 
 たとえ通常兵器において勝利を目前にしていたとしても、核保有国が非核保有国に対して核兵器を使用すれば、戦局はいとも簡単に逆転してしまうからです。勝利まで至らなくとも、少なくとも‘相打ち’まで持ち込むことはできましょう。現代に登場した核兵器は、古代ヒッタイトの鉄製武器、アレキサンダーのプランクス戦法、モンゴル帝国の騎兵そして近世の鉄砲や大砲の登場に勝る威力があるのです。(つづく)
 
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