国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2022-06-09 21:10

(連載1)戦争終結のみちすじ

岡本 裕明 海外事業経営者
 ロシアによるウクライナの侵攻が始まって3か月を超えました。日々、様々な報道を通じてその状況が伝えられますが、西側の報道だけでは当然バランスが悪く、日々の戦況に一喜一憂するより、大所高所から俯瞰しないと全体像は見えないのかもしれません。私の個人的感覚としてはウクライナはやや詰まってきた、という気がしています。この状況の中で日経が2つの戦争終結に関する寄稿を取り上げました。一つは日本でもおなじみのフランス人歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏に対する日経ビジネスのインタビュー記事。もう一つは英エコノミストが掲載し、日経が翻訳した「ロシアの侵攻、終結のシナリオ」。このような記事が出始めてきたということはそろそろ幕引きも意識され始めたということでしょうか。
 
 ロシアが時間をかけてでも目標を達成するという姿勢に対し、ウクライナ側は武器不足に陥っています。バイデン大統領はウクライナが欲しがる多連装ロケットシステムの長射程のものを提供しないとしています。理由は「飛び過ぎてロシア領に入ったらこの戦いが別の次元に入る」からであります。それはウクライナをそこまで信用していないとも言えるかもしれません。要するに西側諸国はウクライナを後方支援こそすれど、「飛び道具」は将来のリスクを勘案すれば出しにくいわけです。例えばある国がウクライナに強力な武器を提供し、それが意図するしないにかかわらず、ロシア領にダメージを与えればその武器を供与した国はロシアとの紛争に巻き込まれるリスクが無限に高まることになります。それは避けたい、というのが本音でしょう。
 
 上述のエコノミスト誌の記事のトーンは戦争をなるべく終結させ交渉を開始すべきとする「和平追求派」とロシアを徹底的に攻め上げるとする「正義を求める対ロシア強硬派」の意見の対立を取り上げています。これは主に欧州での対立軸で、例えばマクロン大統領は「欧州は長期的にはロシアと共生する道を探らなければならない」とする一方、ロシアとの国境に近いエストニアの首相は「プーチンを刺激するよりプーチンに譲歩する方がはるかに危険だ」とあります。ではアメリカはどうなのか、といえば同誌によれば「よくわからない」であります。つまり煮え切らないのです。これが私の指摘するバイデン政権の弱いところで明白な方向性や決断を打ち出せないのです。
 
 このような現状に対しエマニュエル・トッド氏はどういっているのでしょうか。「西洋人は、『ロシアは奪った領土からは二度と出ていかないだろう』という現実を受け入れることから始めなければならない」と述べた上で「真の問題、世界の不安定性はロシアではなく米国に起因している」としています。ご本人は自分の考えがメインストリームではないと断ったうえで落としどころは双方の折衷あるべきと考えています。文意からは東部ウクライナの割譲はやむを得ないのではないかというトーンになっています。これはエコノミスト誌のいう「和平追求派」でありましょう。(つづく)
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会