国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2022-05-27 16:22

「北朝鮮へワクチンの提供を」に同感だ

五十嵐 亮太 士業
 古閑比斗志医師の「北朝鮮へワクチンの提供を」に同感だ。人道主義、国際協調主義に照らせば、たとえ相手が金正恩の北朝鮮であったとしても北朝鮮人民に手を差し伸べるのが隣国として国益に適うからだ。また、パンデミックには国境がなく、「大動乱」の北朝鮮と近い韓国や中国を経由して日本にも医学的あるいは政治的な悪影響がないとはいいきれないことを踏まえれば放置すべきではあるまい。
 
 新型コロナウイルス感染症の世界的流行にも関わらず、公式には北朝鮮では感染者がいないとされてきた。過去のコレラの前例があるためその建前には驚きはしない。ただ、いまこのタイミングでなぜ新型コロナウイルス感染症の国内蔓延を公式に認めたのかは考える必要がある。理由には諸説あるが、感染者がいないという建前を崩さないままには国際社会からの支援が得られないからという側面は確実にあるだろう。それを踏まえれば、北朝鮮は金正恩の権威を傷つけない方法で、日本からの支援もあればほしいと思っているに違いない。他方、北朝鮮が素直に受け取るかは別の話であるため、金正恩の自尊心と北朝鮮人民の苦境双方を斟酌する必要があるだろうし、「苦難の行軍」の際に国際社会が北朝鮮を手厚く支援したのを金正日がどう利用したかも振り返る必要はあろう。
 
 さて、古閑医師は人道支援の例としてポリオのソ連を上げているが、戦前には関東大震災の際に激しく日本と対立していた中国での官民問わずの支援が挙げられる。そのなかには後に爆殺される張作霖や日中戦争の激戦地となる上海各界の手によるものもあった。そして、その際最も友好的に援助したのは、のちに国家総力戦を行う米英である。そのとき当該国が敵対的か友好的かは、人道上すべき行いを控えるかどうかとは分けて考えるべきということである。もちろん、拉致や核などで政府の対北朝鮮政策がぶれたことにもならない。
 
 林外務大臣は22日、すでに「放置することはできない」と対応を示唆している。北朝鮮とは国交がそもそもなく、日本政府独自の経済制裁を同国にしていることもあり、今後具体的にどのような支援のあり方があるか慎重に検討していくことになろう。どんなかたちであれ、人道支援はまず取り組むことに価値があり、それは覇権主義が膨張する国際場裡において日本の価値観を行動で示すことにもなるのである。適切に北朝鮮人民のコロナ対策に生かされるならば、ぜひ進めていくべきだ。
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会