国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-08-15 09:52

連載投稿(2)南北の利益の一致が生んだ首脳会談合意

武貞秀士  防衛省防衛研究所統括研究官
 また、韓国にとってのもうひとつのメリットは内政に関連する。南北首脳会談を成功させれば、金大中政権以後の太陽政策の仕上げの意味になる。それは、北朝鮮への融和政策を厳しく批判してきた野党ハンナラ党に対して、「現政権の政策は失敗していない」と示すことになるだろう。その雰囲気は、12月19日の韓国大統領選挙に大きな影を落とすだろう。ただ、韓国にとって、首脳会談は両刃の剣である。首脳会談が成果なく終わったり、対立したまま終ったりするとき、首脳会談開催が拙速だったといわれる。韓国が北朝鮮に譲歩しすぎた場合、韓国世論は反発し、4か月後の大統領選挙では、韓国の現政権に不利な結果になる危険をはらんでいる。

 そうなると、北朝鮮の姿勢が重要になるが、韓国大統領選挙を意識する北朝鮮も首脳会談を失敗させたくないので、一回目の首脳会談以上の成果を出すことに努力し、米朝協議や6か国協議で到達できなかった成果を出すことに努力するだろう。いま、北朝鮮は南北関係が順調に改善されつつあることを示したい時期だ。核問題では高濃縮ウラン型核計画の有無をめぐって、困難な協議が予想される。それを知る北朝鮮は、韓国への「柔軟な政策」を示しておいて、6か国協議で譲歩するのは米国であると示したいだろう。北朝鮮が南北対話の進展を、「米国が核問題、金融制裁で北朝鮮に厳しい姿勢をとっていると、南北関係改善の流れに置いてゆかれる」というメッセージに利用することは珍しくない。

 このように、南北の利益が一致したので、首脳会談合意に至ったのである。そこにあるのは、米韓同盟のもとで自主国防を追求してきた韓国の米国に対する「思い」と、「韓国の自主性はどこにあるのか」と問い続けてきた韓国ノムヒョン政権の政策と、それを観察し、韓国の自尊心の高まりを対南政策に活用する北朝鮮という構図である。そこには朝鮮半島の旧来の構図が見える。来年、南北は建国60年を迎える。さて、南北首脳会談で、新しい構図が見えてくのかどうか。2000年6月の第一回首脳会談とは比較にならないほどの重要な出来事になるだろう。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会