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2022-04-14 19:42

「核の傘」を強化する日米の協議機関を設置せよ

加藤 成一 外交評論家(元弁護士)
 2月24日に始まったロシアの「ウクライナ侵略」は、ウクライナ国民の生命財産と同国の領土に悲惨で甚大な被害と損害を与えており、いまだに停戦の見通しすら立たない状況である。「専制主義国家」のロシアによる、力による現状変更の試みは、第二次世界大戦後の国連を中心とする国際秩序に対する重大な挑戦であるとともに、「自由民主主義国家」である欧米・日本の価値観に対する挑戦でもあると言えよう。のみならず、ロシアのプーチン大統領は、6000発を超える大量の核兵器保有を誇示し、ウクライナや欧米諸国に対して、軍事介入など、ロシアの戦争目的を阻止する国に対しては、核兵器の使用を排除しない旨の「核恫喝」を行っているのである。こうしたプーチン大統領による「核恫喝」に対して、米国のバイデン大統領は第三次世界大戦(「核戦争」)を恐れ、ウクライナ紛争については当初から軍事介入をしない旨を明言していた。このようなバイデン大統領の「弱腰」がロシアによる「ウクライナ侵略」を誘発した側面も否定できない。
 
 このように、核兵器大国であるロシアに対しては米国やNATO諸国は派兵等の軍事介入ができず、武器供与等の軍事支援も極めて慎重で抑制的である。このことがロシアの侵略行為をますます増長させていると言えよう。すなわち、ロシアのような核兵器大国による「核恫喝」に対する、欧米諸国の弱さが露呈したのである。このことは、日米安保条約に基づき「核抑止力」を全面的に米国に依存する日本にとって極めて深刻な事態でもある。具体的には、米国の「核の傘」(「拡大核抑止」)の実効性、信頼性、確実性に重大な疑念が生じるのである。なぜなら、将来、仮に核保有国の中国が尖閣諸島や沖縄本島を軍事侵略した場合でも、今回のロシアに対するのと同様に、米国が中国との「核戦争」を恐れて実質的な軍事介入をしない可能性があるからである。のみならず、中国が日本に対して核攻撃を加えた場合にも、尚更「核戦争」を恐れて、米国が中国に対して「核報復」をしない可能性があるからである。「核の傘」は日本にとって、「核抑止力」を担保する最後の生命線であり、日本国の存立と1億2000万人の日本国民の生命財産の確保にとって、まさに死活問題である。
 
 よって、筆者は、「核の傘」の実効性、信頼性、確実性を高め、これを担保するため、「核の傘」の運用全般に関する「日米共同常設協議機関」を米国と協議の上、早急に日本国政府内に設置すべきことを提案する。「日米共同常設協議機関」の主要メンバーは、日本国首相、米国大統領、日本国外務大臣、米国国務長官、日本国防衛大臣、米国国防長官、日本国統合幕僚長、米国統合参謀本部議長とする。 「日米共同常設協議機関」の目的と協議内容は、米国の「核の傘」の運用全般に関する事項の協議であり、具体的には、(1)米国核兵器の管理状況、(2)米国核兵器の配備状況、(3)米国核兵器の運用状況、(4)米国核兵器の使用基準と使用方法、(5)中国、北朝鮮、ロシアの核保有国の動向とこれに対する対応、等に関する日米間の意思疎通・意見交換・情報交換・情報共有・共同対処方針の協議と確認である。
 
 これによって、日米間の「核抑止力」に関する信頼関係が格段に強化され、「核の傘」の実効性、信頼性、確実性が担保されて飛躍的に向上し、核抑止力である「核の傘」が具体化し強靭化されるであろう。さらに、これによって、核兵器を共同運用する「核共有」(「ニュークリア・シエアリング」)とほぼ同様の効果がもたらされるであろう(3月12日「百家争鳴」掲載拙稿「「核共有」議論避けるべきでない理由」参照)。そして、これによって、中国、北朝鮮、ロシアの核保有国に対する「核抑止力」が格段に強靭化されるであろう。
 
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