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2022-03-24 22:27

(連載1)日本国政府は正攻法で-NPT体制の見直し問題

倉西 雅子 政治学者
 NPT体制において合法的核保有国であるロシアが核を脅迫に用いたことから、ウクライナ危機は、日本国内にも核シェアリング、及び、核保有の是非をめぐる議論をもたらすこととなりました。同問題提起に対し、岸田文雄首相は、即座に非核三原則の堅持を以って応えましたが、最終的な判断は別としても、少なくとも議論を行う必要性は国民の多くが認めるところとなっております。行く先には崖淵が待ち構えているかもしれない状況下にあって、ルートの変更に関する議論を封じるのは、あまりにも危険であるからです。リスク対応の側面からしますと、日本国政府にしばしば見られる条件反射的な核に対する拒絶反応には疑問を抱かざるを得ないのです。
 
 日本国は、人類史にあって唯一の被爆国であり、原子爆弾のもたらす悲惨さを身を以って経験しています。日本国にあって非核三原則が設けられたのも、国際的な要因もあるのでしょうが、被爆国としての立場が強く影響しており、同原則は、非人道的な兵器が二度と用いられてはならないとする国民の願いによっても支えられてきました。今般の核に関する議論においても、日本国政府は、核廃絶を理想とする立場から同原則に忠実に従おうとしたのでしょう
 
 しかしながら、ウクライナ危機は、核保有国が、非核保有国であり、かつ、核の傘もない国に軍事侵攻したことで、従来の核に対する認識を大きく転換させる機会となりました。そして、ロシアの態度は、ウクライナと同様の立場にある国々に対して核保有国の脅威をまざまざと見せつけることともなったのです。国連体制にあって’警察官’の役割を担い、それ故に、拳銃の携帯(核保有)を合法的に許されてきた国(常任理事国)が、その拳銃で脅しながら家宅侵入する強盗に変身したに等しいのですから。
 
 ウクライナ危機によって、中国による台湾侵攻や尖閣諸島への軍事行動の可能性も格段に高まったとされていますが、同危機は、具体的な侵略行為のみならず、中国の周辺に位置する中小のアジア諸国に対してチャイナ・リスクを高める方向に働いたことは否めません。インドとパキスタンは、印パ戦争を背景として核を保有するに至っていますが、東南アジア諸国をはじめその他は非核保有国であり、かつ、核の傘を備えていないからです(南米、アフリカ、中央アジア、東南アジア、南太平洋諸国等では、非核化地帯条約も締結されている…)。(つづく)
 
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