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2022-03-18 15:28

(連載1)日本の危機対応への意識の低さ

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 ウクライナが直面する戦禍が日々報じられる中、日本の「平和ボケ」について改めて焦点があたっている。日本ではテレビ解説者やコメンテーターがウクライナ情勢についてよく持論を展開しているが、平和の恩恵に長く浴し過ぎたのだろうと思わざるを得ない主張が散見される。
 
 まず、今回のウクライナの問題に関しては、ウクライナにはウクライナの、ロシアにはロシアの主張があるということを理解すべきである。その両論をしっかりと対照的に精査し、日本人として自分の立場を表す必要がある。そのうえで、私の立場を書くと、「主張の正しさ」ということではなく、今回はロシアがとった「手段」が悪かった、ということにほかならない。戦争を引き起こし軍事的な殺戮をしながらに正義の主張をしても、ロシアの正義を理解する人はいない。よって、手段という意味で、ロシアが一方的に悪い。そして、ロシアのプーチン大統領は、その手段の是非に対する批判を、情報を封鎖する、言論を封じるという手法で処理しようとした。もちろん、この「手段」も悪いということになる。
 
 我々が論じるときは、当然に「主張」と「手段」を分けてみるべきである。その手段に対してどのように制裁を加えるのか、また和平交渉や停戦交渉において主張をどれくらい考慮するのかということである。現在のマスコミで、「主張」と「手段」をしっかりと分けて話をできている人はほとんどいないのではないか。ネット上では、さらにディープステートなどという単語が飛び交って陰謀論が渦巻く始末である。言及するのも情けないが、ディープステートだとかロックフェラーだとかの陰謀論は、問題の解決に何の役にも立たない。議論可能な土台のない陰謀論を書いても発展性がなく、現実世界での解決にはつながらないからだ。まずは何らかの影響力を持つ言論ができるのであれば、いや、そうではなくてもSNSという世界が見ている空間の中で発言をする人であれば、せめて自分の思ったことに加えて、解決に役立つ内容や考え方を示すべきではないのか。そういう意味でも、感情的な戦争反対論や、客観性に欠ける陰謀論を見るたびに、「日本は平和である」と感じてしまう。
 
 さて、平和ボケといえば、日本のサイバー攻撃への対応も「平和」以外の何物でもない。そもそもこのサイバー攻撃そのものは、間違いなく「犯人」がいるのであって、陰謀論ではないけれども故意の犯罪行為である。もちろん、その攻撃をしてきた人々の狙いは何なのかということまでふくめて、解析をしてゆかなければならない。国家としてサイバー攻撃に向き合うとき、武器による攻撃と同等の攻撃と見なすという、現代の考え方がしっかり根付いていないことが日本にとって重要な課題で、時代が変わったにもかかわらず70年前の国会答弁や戦争の経験による定義で戦争を定義づけていること自体がナンセンスである。(つづく)
 
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