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2022-02-03 23:31

非営利活動と寄附と日本の現状-岡本論文を読んで-

道上 篤人 コンサルタント
 岡本裕明氏の「日本のファンドレイジング、北米と大きな差」(2021年12月14日付e-論壇「百家争鳴」)の「日本人はケチです。これは客観的に見て間違っていないと思います。どうケチか、といえば自己満足主義で自分には割とお金を使いますが、利他の心が薄いのです。(中略)知らない人に『身銭を切る』人は少ないのです」という言葉、一般の方には「日本人は和を大切にし親切で助け合いの精神がある」というイメージから意外に思われるだろうが、NPOなどに関わる層の人からすれば有名な話だ。
 
 慈善団体「Charities Aid Foundation」が10年以上にわたって続けている民間調査「World Giving Index」(https://www.cafonline.org/about-us/publications/2021-publications/caf-world-giving-index-2021 )というものがある。「見知らぬ人、または助けを必要としている人を助けましたか?」「慈善団体にお金を寄付しましたか?」「ボランティアに参加しましたか?」といった質問を114カ国、12万人に行って算出した調査だ。この調査によると、新型コロナウイルス感染症により、世界的に多くの人が苦しんだのにも関わらず、逆に世界全体では寄付が増加している。INDEX最上位はインドネシアで、10人に8人以上のインドネシア人が過去1年間に寄付をしたことがあり、インドネシアのボランティア活動率は世界平均の3倍以上だという。こういう国が同じアジアにあるのである。
 
 他方で、日本は同INDEXにおいて、「見知らぬ人、または助けを必要としている人を助けましたか?」において114位、すなわち最下位である。「慈善団体にお金を寄付しましたか?」においては、107位、日本人の12%しか寄付をしない。「ボランティアに参加しましたか?」は91位。総合で114位、ギリギリではなくブービーのポルトガルと有意の差をつけて最下位である。
 
 岡本裕明氏が言及しているように、基本的に日本における寄附は、ふるさと納税のように直接的な見返りを前提とした本来の寄附とは異なる性質のものでなくては根付かないため、結局日本の非営利活動は国税が財源の補助金や税制優遇に支えられる面が大きくなる。その恩恵を受けられない有志は貧弱な財政基盤のもと経済的に非持続的な活動を強いられている。これは慈善団体だけではなく、非営利の外交系シンクタンクなどにおいてもそうであろう。営利だけでは賄えないものがあり、それが社会において非常に重要な価値を提供していることは同INDEXの報告書が詳細に説明しているが、日本においてはまずは、「利他的であること」の本当の意義を再認識し、その上で、ボランティアや寄附文化を定着させなければならないだろう。私も岡本氏と同様にそんな自国の社会の現状認識に「世知辛さ」(同岡本論文)を感じるのである。
 
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