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2007-08-09 00:43

共同体建設と共通言語

滝田賢治  中央大学教授
 人類世界の平和を願って、ポーランド人のザメンホフが1887年に人工的に創作した国際語エスペラント語は、一部の熱烈な支持者の活動にも拘らず国際的に広がらなかった。世界連邦政府建設運動と同じように、その理念は素晴らしいが、現実的根拠――言葉は現実の生活の中で長大な時間をかけ広がるものであり、政治共同体も多様な現実の生活空間を時間をかけながら統合して形成される――を欠いていたため、実現へのモーメンタムがつかなかったのである。世界語となったのはエスペラント語ではなく、英語であることは言うまでもない。13~14億人の人々が使う中国語ではなく、5~6億人が使う英語が世界語となっている。世界中のパイロットや空港の管制官も、国際オリンピック委員会でも、世界癌学界でも、共通言語として使われるのは英語であるのはもはや常識以前のことである。

 東アジア地域で共同体――筆者は環境・感染症・海賊行為・反テロなどプラクティカルな分野での協力のレジームの重層的束を意味するものとして使っているが――を建設していくためには、世界語となっている英語が不可欠であることは指摘するまでもない。この点に関してはほとんどの人が同意するが、日本ではいざ英語能力、英語によるコミュニケーション能力を高めるためのプログラムを教育の場に大々的かつ体系的に導入しようとすると、執拗な抵抗に遭うのである。英語重視は「文化帝国主義」だと言って反対を受けたのは旧聞に属するが、このプログラムを大々的に導入することによって大学内における自らの位置が危うくなることを恐れる教員達が執拗に反対するのである。

 中国では英語力を国力の重要な要素と位置づけ力を注いでおり、一定のレヴェルに達しなければ形式的に卒業はさせるが卒業証書を渡さない大学もあり、教員も英語を中心に外国語の能力が一定期間に一定のレヴェルに達しなければ雇用契約が切られる場合が増えてきたようである。韓国のソウル大学ではネイティヴの教員だけを招聘し、英語のみで授業をする学部を創設する予定であると聞いたのは、つい最近のことである。同じく延世大学でも三分の一の授業が英語で行われているし、高麗大学の大学院ではサマープログラムにネイティヴとこれに準ずる教員を招聘し、すべて英語で授業を行っている。

 日本が、東アジア共同体建設に積極的に関っていく場合、少なくとも英語で議論し、論理的文書・資料を作成できる人材を大量に育成していくことは国益に適うことである。ネイティヴ教員の招聘――21世紀の「お雇い外人」と批判も受けるだろうが――や、日本人学生にあった教材作成のために公的資金を投入することは、共同体建設に不可欠な条件である。
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