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2021-06-29 22:47

二階幹事長の「インド・太平洋議連」設立の意図とは

倉西 雅子 政治学者
 二階俊博自民党幹事長が自ら中国包囲網とされてきた「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指す議連を設立しました。これは親中派の’ドン’として知られる同氏の経歴からすると極めて奇妙です。中国の視点からしたら反中グループとも捉えうる議連になるのですが、二階幹事長の行動は、一体、何を意味するのでしょうか。
 
 第1に推測されるのは、二階幹事長が、文字通り中国からアメリカに鞍替えしたというものです。海千山千の政界を生きてきた同幹事長のことですから、政治的嗅覚は人一倍であるはずです。また、中国との関係が親密であることから、一般の日本国民はおろか、政治家でさえ知らない中国政府、あるいは、中国共産党の内部情報をも入手し得る立場にあることでしょう。政権与党の幹事長として知り得たアメリカ側の情報を勘案し、米中対立にあって’中国は負ける’と確信したのかもしれません。以前、アメリカの政府系研究機関の報告書にあって二階幹事長は親中派と名指しされていたこともあり、二階幹事長は早速、自ら議連を発足させてアメリカに方針転換を印象付けようとしたのかもしれないのです。二階幹事長が食わせ者の政治家であることを踏まえれば、二階幹事長の行動は、生存戦略として、理解できます。
 
 しかしながら、事はこれほど単純なのでしょうか。現状にあって、中国側からも二階幹事長を名指しで批判したり失望したりといった声は聞こえてきません。同国が静観を決め込んでいるのには、もちろん単純に関心が向いていない可能性もありますが、同幹事長の行動が中国の織り込み済みである可能性も考えられます。議連設立が中国自身にメリットをもたらす出来事であったのかもしれません。すなわち、第2の推測は、中国による’偽旗作戦’というものです。古今東西を問わず、内部化された’敵’ほど危険な存在はありません。二階幹事長は、親中派のままに議連のトップの座を利用し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた諸活動の主導権を握ろうとするかもしれないのです。つまり、中国は、中国包囲網そのものへの影響力の行使を企図しているのであり、こうした’乗っ取り作戦’が中国の得意技であることは、WHOといった国際機関を観察しましても一目瞭然です。あるいは、’偽旗作戦’とまでは言わないまでも、中国は、同議連の枠組みを利用して野党を含む国会議員の政治的スタンスを探ろうとしているのかもしれません。参加する議員は、反中派と予測されます。同議連は、これらの議員に関する情報収集の場となりかねず、同幹事長を介して、議連での発言内容等の情報が中国側に筒抜けになりかねないのです。
 
 そして、第3の憶測は、仮に二階幹事長が稀有な政治家であるとすれば、中国、アメリカ、そして日本国を手玉に取り、自らをキーパーソンの位置に置くというものです。即ち、同幹事長を通さなくては、日米中の三国関係は動かないという状況を造り出そうとしているのかもしれません。もちろん第4の可能性として、これまで上げたどれとも違う第三者の意図や影響を否定する必要もありません。不可解な行動には必ず’裏’というものがありますので、政府も国民は、先ずは、その背景こそ的確に見抜かなければならないように思うのです。
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