国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-07-20 12:59

対中国ビジネスにおける知的財産権保護

鈴木馨祐  衆議院議員
 参議院選挙も間もなくであるが、政治家という仕事柄、日本全国各地の大企業から中小企業にいたるさまざまな会社の経営者や現場の方とお話しする機会が多い。特に製造業ではある程度の規模の会社であればアジア諸国等とビジネスをしていることが多く、グローバル化した社会とはいえ逞しく発展のチャンスを模索している企業の努力には本当に頭が下がる思いがする。と同時に驚かされるのは、そのほとんどの会社において、必ずといっていいほど同じ話題が出てくることである。それは中国とのビジネスの難しさ。特に知的財産権の関係や税制や手続き等の現場の問題についての苦労や諦めにも似た嘆きを耳にすることが多い。

 もっともこれは日本だけの問題ではなく、中国に進出しているほとんどの外国企業が共通して抱えている問題であろうことは外国メディアにおいてもしばしばこの問題が指摘されていることからも明らかであろう。中国の経済成長が続き、しかもそれが世界の人口の約4分の1を占める巨大な国のマーケットであることを考えれば、今後の日本経済の成長戦略を考えていく上で中国市場は避けて通れないテーマである。であるならば、中国におけるビジネス環境や知的財産権の問題に関して日本が受ける被害を最小限に抑えるような戦略を立ててそれの実行をしていくことはまさに日本の政治家や政府に何よりも求められる産業政策なのではないだろうか。

 中国のビジネス環境や知的財産権の問題は大きく分ければ二つの点に集約されるのではないか。一つには中国共産党の中央自身が対外的なポーズは別として実態としてはこの問題に真剣に取り組んでいないように見受けられるという点、そしてもう一点は中央政府が地方や企業に対するコントロールを十分にできていないのではないかという点である。それぞれの処方箋は自ずから異なるわけで、日本としてのかかわり方も異なる。

 一つ目の点については、何よりもまず中国共産党政府自身がこの点に関し危機感を抱くような状況に追い込んでいかなくてはならない。具体的には、日本が比較優位を持っている技術等に関しては技術協力や経済支援などの名目であっても中途半端な形での持ち出しは絶対に行わない、つまり目先の利益に囚われず相手が真に欲する状況となるまでは安易な形での技術移転は行わないということ、そして知的財産権の基盤の不安定さは中国のイノベーションも阻害し長い目で見れば中国自身の発展のマイナス要因となるということをしっかりと伝えて理解させていくことに尽きる。

 また二番目の点については日本政府としてもアメリカの通商代表部(USTR)がそうしているように日本企業が進出している地方の省政府など中央政府以外の機関と交渉しキメ細かくプレッシャーをかけることであろう。もちろん企業自らが政治リスクのある部分については中国の資金を活用する、中国の人材を活用するなどして中国側が公正な態度で対せざるを得なくするような仕組みを構築する工夫を自ら行うことは何よりも重要であり、その知見等の共有化を図ることも日本政府として行わなくてはならないことであろう。しっかりと取り組んでいきたい。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会