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2021-05-29 22:13

先進七カ国外相会談と「中国の無責任」

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 大国の責任とはいったい何なのだろうか。「警察」不在の国際社会においては、大国が自国の都合で意図的に国際ルールを都合よく解釈したり、秩序を揺るがすことで対外関係を優位にすることが可能だ。それを小国相手にやれば覇権主義であるし、大国の間で「二虎共食」の状況が始まれば、最終的には戦争ということになる。それを避けるために、大国は自国の発展ばかりではなく、国際秩序を尊重した大国間外交をするのみならず、発展途上国の支援や産業投資などを行うことが、さすがに義務とは言わないまでも大国の責任として期待されているといえる。
 
 では、中国共産党はその意識があるのだろうか。一帯一路では小国相手に債務の罠を仕掛け、近海では武力による現状変更を行い、インドのような大国が相手でも軍事的威圧を行っており、その大国の責任を認識しているのか怪しい。というのも、中国共産党のエゴが対外政策に露骨に表れているにしても、それは対外関係が熟慮されているというよりも、中国共産党の中の派閥争いの結果として生じているものであり、国内要因が強く作用しているようにみえるからだ。そのために、既存の国際秩序の上での繁栄という「現状維持」に甘んじるのではなく、中華思想の世界観から世界を「指導」しようとしているとしたら我々にとっては危ういことである。
 
 さて、今回先進七か国外相会議で「中国」を警戒するという決議がでた。このメッセージの勘所は「中国の掲げた一帯一路政策、拡張主義への危機感」であろう。ウイグルでの国家的人権侵害がことさら大きく言われ始めたのも、これが中国を牽制するのに使えるからである。中国の少数民族政策における人権侵害は最近の話ではなく、昔から内モンゴルやチベットなどにおいても指摘されてきたことである。そもそもウイグルよりも、内モンゴルの方が反共産主義の団体は先にできており、私が中国にいた90年代後半からすでに様々な活動をしていたのである。それが今更になって、遠く大西洋から英仏の軍艦まで来て示威行動を取ろうとしている。これは何なのか。
 
 地政学的に一帯一路の一帯、つまり陸上は、ハートランドになっており、その中心はウイグルである。これは、かなり大きな問題で中国は債務の罠とウイグルの支配によってハートランドの支配を狙っているということになる。そして一路、つまり海路は、リムランドになっており、マハンの言うシーパワーの集合体になっている、つまり中国は一帯一路でリムランドとハートランドからユーラシア大陸全体に支配を伸ばそうとしている。もちろん中国にとって経済圏だけの構想で、日本が行っているような緩やかな経済連合体を作るにすぎないというのであれば健全な地域大国的振る舞いといえようが、中国は各地に駐屯地を作り軍事的なプレゼンスを高めているし、現地に中国人を送り込んでいる。このように中国の大国としての責任感のない振る舞いに対する警戒感が西側諸国で共有され、ヨーロッパと日本とアメリカが、協調してこの挑戦を退けようと考え始めたのは重要な変化だ。中国はこのような欧米中心の動きを批判をするが、それだけで終わるはずがない。何らかの内容が水面下で行われているはずである。日本としてはそれを早く見破り、先手を打つ外交が求められているのではないか。
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