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2021-04-14 19:16

(連載1)’平和裏’に併合されたウイグルの教訓

倉西 雅子 政治学者
 軍事力が飛躍的に向上した中国は、今や、多くの国々から国際社会における平和への脅威として認識されています。その一方で、14億の市場の魔力に惹きつけられてか、あるいは、共産主義に染まってか、自由主義国にあっても、中国に対する融和を唱える勢力は少なくありません。つい数年前には、’中国から攻められたらお酒を飲み交わして話し合えばよい’と発言し、世間を驚かせた学生団体もありましたし、中国とは戦わずして白旗を掲げるのが平和的解決とする意見も散見されます。
 
 こうした対中融和派の人々は、中国との間で戦争にさえならなければ、日本国民の命だけは救われると主張しています。戦争ともなれば、先の大戦のように日本国民の多くは命を失うが、戦争を回避して素直に降伏すれば、生き残ることはできるのだから、それで満足すべし、としているのです。たとえ日本国が中国の支配下に置かれる、あるいは、主権を失って属国となったとしても、命に優るものはない、と…。しかしながら、この見解、甘いのではないかと思うのです。
 
 中国政府のウイグル人に対する弾圧は、アメリカにジェノサイド(民族浄化)として認定される程、残虐極まりないものです。ウイグルでは、イスラム教徒の人々が教義上できない棄教を迫られ、漢人の大量移民により都市風景も変わっております。並びに、漢族との強制的な混血や不妊手術などによるアイデンティティー抹殺政策も報告されています。’ウイグル人’そのものがその存在を許されておらず、かの地では、特定の民族を丸ごと消去しようとする’民族浄化’が行われているのです。ウイグルだけではありません。チベットにあっても、多くの人々の命が虐殺によって無残に奪い取られてきました。それでは、ウイグルやチベットは、中国と戦争をした結果として、このような悲惨な境遇に置かれることになったのでしょうか。それであれば、冒頭の対中融和論にも多少の理があります。
 
 歴史は、この問いに対して、’否’と答えています。世界史の教科書を開いても、中国とチベット、並びに、ウイグルとの間に戦争があったとする記述はありません。中国政府は、東トルキスタン政府との合意により、同地を新疆ウイグル自治区として合法的に併合したとしています。しかしながら、この併合、毛沢東の謀略によって遂行されています。(つづく)
 
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