国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2021-03-27 23:07

ラムザイヤー論文への激しい反発の理由

倉西 雅子 政治学者
 ハーバード大学のマーク・ラムザイヤー教授の‘慰安婦’に関する論文が波紋を呼んでいます。同論文は、ゲーム理論を用いながら‘慰安婦’が契約に基づく職業人としての女性達であった実態を客観的に論じたものなのですが、韓国では強い反発が起きる一方で、日本国内では、海外にあって学問の場でようやく事実が事実として認められるようになったことに、安堵感が広がったのです。査読を経て掲載されたのが経済専門誌であったことが示すように、同論文は、’慰安婦’を職業の一つと見なして分析しています。実際に、慰安婦が職業の一つであったことは疑いようのない事実であり、日本国内には、慰安婦契約に関する雇用条件等を定めた法令が史料として残されています。日本国政府は、むしろ’慰安婦’たちを保護し、悪徳業者を取り締まる立場にあり、況してや、日本軍が朝鮮半島にあって幼気な少女達を戦場に強制的に連行したという韓国側の主張は、事実と異なります。日本国内では、ラムザイヤー論文を待つまでもなく、’慰安婦’の実像は、数々の史料や証言等によって明らかにされてきたとも言えましょう。
 
 しかしながら、国際社会では、韓国による積極的なプロパガンダもあって、’慰安婦=奴隷’とする虚像が拡散されてきました。国連のみならず、アメリカやヨーロッパ諸国にあっても日本批判の声が絶えず、世界各地に’慰安婦像’も設置されてきたのです。今般のラムザイヤー論文についても、ニューズウィーク誌は、「Fight for Justice」と称する団体が主催したシンポジウムにおける同論文に対する批判を紹介しています。その主たる批判点は、事業者と’慰安婦’との間の’契約における非対等性にあり、その実態は、’人身売買契約‘であったというものです(なお、同団体の基準では、’丁稚奉公‘も人身売買契約に含まれるかもしれない…)。確かに、かつて’身売り‘とも称されていた慣行があったことは事実なのですが、明治以降、日本国政府は、国際法に添いつつ、法の制定により’慰安婦‘、あるいは、’娼妓‘の保護に努めています。そして、何よりも、同団体の批判点がピントを外しているのは、’慰安婦‘という職業は、朝鮮半島に固有のものではなく、全世界において普遍的に存在してきた点です。

 戦時に限っても、’慰安婦‘の出身別の構成は日本人慰安婦が半数以上を占めており、朝鮮半島出身者は比較的少数です。言い換えますと、「Fight for Justice」は、’慰安婦‘を日本軍による強制連行された女性達ではなく、その募集が雇用契約に基づくものであったことを認めた時点で、日本国のみを批判の対象とする拠り所を失ったのです。実際に、朝鮮半島や満州の歴史においても、より過酷な’人身売買‘は行われていたはずです。否、戦場における女性の略奪や奴隷化は、むしろ、チベットやウイグル等において今日なおもその一端が露わとされているように、大陸の諸国においてこそ見られます。仮に、人身売買が日本国のみに蔓延った悪習であったならば、国際社会にあって人身売買を禁止する国際法が制定されることはなかったことでしょう。
 
 ラムザイヤー論文が事実に基づくものであった点を確認しますと、ここで重大な疑問が湧いてきます。それでは、何故、事実を事実として語ったラムザイヤー論文に対して、かくも激しい反発が起きているのか、ということです。ニューズウィーク誌には、「2月17日にはハーバード大学の歴史学部の二人の教授が論文の撤回要求声明を出し、翌18日には5人の研究者による研究上の不正を理由とした撤回要求声明が出ている。それ以降も、この論文を「懸念する経済学者たちのレター」にゲーム理論の研究者含む学者2000名以上が署名するなど、ラムザイヤー論文に批判が集まる一方、ラムザイヤーを学問的に擁護する声はない。」とあります。韓国ではなく、アメリカ国内において反発が起きているというのです。ラムザイヤー論文に否定的な研究者たちが全て韓国系であるとも思えず、世界的にも有名な大学の一つが、学術的な論文に対してヒステリックな反応を起こしている現状は、日本人の目からしますと奇異に映ります。しかしながら、同大学が、伝統的に民主党の影響が強く、リベラルな校風である点を考慮しますと、中国やユダヤ人社会による支援があるのかもしれません。今日、’第三次世界大戦’とも称されるコロナ禍にあって多くの人々の人命が失われています。第一次、そして、第二次世界大戦の愚を繰り返さないためにも、事実を追求してゆくべきではないかと思うのです。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会