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2021-02-01 10:04

(連載1)バイデン新政権と不正選挙の代償

斎藤 直樹 山梨県立大学名誉教授
 2021年1月20日にバイデン政権が発足したが、同政権は今後、これまでどの政権も経験したことがない問題に悩まされる可能性がある。その問題とは政権が立脚する成立基盤の正統性に由来するものである。政権の正統性をなによりも担保するのは大統領選における揺らぐことのない勝利であることは間違いがない。ところが、2020年米大統領選でのバイデン氏の勝利はこの点がはなはだ疑わしいと言わざるをえない。同大統領選において前代未聞と言える空前規模の不正が行われたことは否定できない事実である。11月3日の投票日直後から今日まで、米国でも日本でも大手メディアが選挙不正について全くと言っていいほど、報道していないことから、公正な選挙を通じバイデン氏が新大統領に選出された印象を与えるが、現実は相当違うと言わざるをえない。未曾有と言うべき規模の深刻な不正が行われたことは米国民の間では公然とした事実である。12月6日から9日に行われた「フォックス・ニュース」による世論調査は選挙不正に対する米国民の認識を正確に示している。(ほとんどの大手メディアは不正など全く行われなかったとする立場から、不正についての世論調査がそもそも存在しないのが実際である。)上記の世論調査によると、「大統領選はトランプから盗まれた」とみる世論は驚くべき数字を示した。それによれば、全体では36%、トランプ候補への投票者では77%、共和党員では68%、無党派層では26%、民主党員では10%が大統領選は盗まれたとみている。(“Sen. Hawley blasts ‘hypocritical’ Democrats over election count objection, points to Bush race,” Fox News, (December 30, 2020.)米国民の相当数が大統領選で勝敗が覆るほどの大規模かつ深刻な不正があったと認識していることは尋常な事態ではない。
 
 12月中旬までに百人を優に超える内部告発者達による各激戦州の議会(ペンシルベニア、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダなど)で開催された公聴会での膨大な数に上る証言、トランプ弁護団による綿密な不正調査、ナバロ大統領補佐官による「ナバロ・レポート(The Navarro Report)」などを通じ、実際に企てられた不正の輪郭が明らかになりつつある。その中でもジョージアでの集計場に設置された監視カメラに捉えられた不正現場の映像は疑う余地のない「物的証拠」であったが、保守系メディアを除けば大手メディアは全く取り上げなかった。またこれだけ明白な不正が企てられたのに対し、FBIや司法省も捜査に動こうとしなかった。明らかに何かがおかしいと言わざるをえない。不正を暴く数々の調査が多数の米国民や米議員達に衝撃を与えたとは言え、2020年大統領選の結果を覆すまでには至らなかった。12月上旬にテキサスとそれに同調する十数州がジョージア、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの四州を選挙ルール違反や選挙不正があったとして連邦最高裁に訴えたものの、「原告適格」がないとして全く相手にされなかったことは周知のとおりである。このことは大統領選の結果を覆すことがいかに至難であるか逆に立証することになったとも言えよう。
 
 12月14日に全米の各州政府において州政府選出の選挙人の投票が行われた結果、各候補が獲得した選挙人数はバイデン候補が306人、トランプ候補が232人と正式に確定した。この結果が2021年1月6日開催の米上下両院合同議会に送付され、同議会で選挙人認定証に従い選挙人投票を数え、ペンス副大統領(上院議長)が次期大統領を正式に発表する運びとなった。とは言え、大規模不正を受け、1月6日の両院合同議会でバイデン氏を次期大統領とする選挙人認定証に対し異議申し立てが行われた。下院議員による異議申立てはこれまでも行われてきた。2000年大統領選に続き、2016年大統領選においても下院議員による異議申立てがあった。とは言え、州政府が確定した選挙人認定証を棄却するためには下院議員の異議申立てに呼応して一人以上の上院議員が異議を申し立てる必要があった。これまで上院議員が異議を申し立てた事例はなかったとされる。今回、ブルックス(Mo Brooks)下院議員が1月6日の両院合同議会で異議を申し立てることを明らかにすると、これに呼応してタベルヴィル(Tommy Tuberville)次期上院議員が異議を申し立てる意思があると示唆した。続いて、ハウリー(Josh Hawley)上院議員が異議を申し立てると手を挙げると、これが多くの下院議員を動かすことになった。その結果、140人もの下院議員が異議申立てを行う流れにつながった。
 
 しかもハウリー上院議員の異議申立ての動きに呼応する形で、クルーズ(Ted Cruz)上院議員を筆頭とする11名の上院議員は選挙不正調査委員会の設置を提案する意思を表明した。クルーズ氏に歩調を合わせた上院議員にはジョンソン(Ron Johnson)、ランクフォード (James Lankford)、ダインズ (Steve Daines)、ケネディ(John Kennedy)、ブラックバーン (Marsha Blackburn)、ブラウン(Mike Braun)、ルミス (Cynthia Lummis)、マーシャル(Roger Marshall)、ハガティ (Bill Hagerty)、上述のタベルヴィル氏が含まれた。1月6日にクルーズ氏とこれらの上院議員は超党派の選挙不正調査委員会を設置し、10日間で激戦州での不正の調査を行うことを提案するが、同提案が棄却されれば、異議申立てを行うと表明した。メディアに徹頭徹尾ないがしろにされたが、こうした上下両院の議員の動きは今回の大統領選がいかに深刻な問題を内包したかを物語った。いずれにしても、1月6日の米上下両院合同議会は次期大統領を決める最大の山場と目された。ところがそこで起きたのが前代未聞の事件であった。何と、合同議会の最中に熱狂的なトランプ支持者達が米連邦議会議事堂に乱入するという事態へと発展した。同日、トランプ氏が同議事堂から近い場所でトランプ支持者達の大集会を開催していたが、これが大暴走を招く誘因となった。そもそもここに集まったトランプ支持者達は筋金入りのトランプ支持者達であった。これらの支持者の前でトランプ氏が演説を行ったが、いつものトランプ氏の演説とは少なからず違っていた。トランプ氏の声は怒りに震えているように聞こえた。これには幾つかの伏線があった。(つづく)
 
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