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2020-12-28 05:05

(連載1)米大統領選‐運命の1月6日に向けた闘い

斎藤 直樹 山梨県立大学名誉教授
 12月14日に全米の各州政府において州政府選出の選挙人の投票が行われた。この結果、各候補が獲得した選挙人はバイデン候補が306人、トランプ候補が232人と「正式」に確定した。これにより、バイデン候補の次期大統領が確定したかの感があるが、その後、事態は少なからず流動化しつつあると言える。この間、大手メディアはこぞってバイデン候補の次期大統領就任を報道していることから、1月20日の新大統領就任に向けて政権移行が順調に進んでいるかのような印象を与える。他方、大統領選で起きた大規模な選挙不正について大手メディアは相変わらず一切報道していない。これに対し、「フォックス・ニュース」、OANN、NEWSMAXなど保守系メディアは大統領選での大規模不正とバイデン氏の次男ハンターの汚職疑惑を連日のように報道している。またこの間、共和党の連邦議員達は選挙不正について激しい批判を行っている。12月16日に開催された上院国土安全保障・政治問題委員会の公聴会において、ジョンソン(Ron Johnson)上院議員(委員長)は大統領選で大規模かつ深刻な選挙不正が行われたと厳しく追及した。(“Examining Irregularities in the 2020 Election,” U.S. Senate Committee on Homeland Security & Governmental Affairs, (December 16, 2020.))公聴会ではジョンソン委員長がピータース(Gary C. Peters)上院議員と激しく言い争う場面もあった。同公聴会に出席したトランプ弁護団のビナル(Jesse R. Binnall)弁護士はネバダでの不正について衝撃的な証言を行った。何と、優に13万件以上に及ぶ選挙不正がネバダで行われた可能性があると指摘したのである。公聴会後、ジョンソン氏は「米国民の大部分はこれが正当な選挙であったと考えていない。わが国にとってもはや看過できる状況でない」と言明した。(“Probing Election Irregularities,” Fox News, (December 16, 2020.))ジョンソン氏の言葉は誠に重い響きを持っている。
 
 多くの米議員が大規模不正に怒りを表明しているだけでなく、米国民の怒りもますます高まりをみせている。12月上旬の世論調査ではトランプ支持者の77%が大統領選で重大な不正があり、共和党支持者の68%が選挙は盗まれたと感じている。この結果、大規模不正があったことは公然の事実となった感がある。その後、保守系メディアによる連日の報道を受け、米国民の不正に関する認識度はさらなる高まりを見せている。民主党支持者の1割程度が重大な不正があったと認識しているとされるが、実際には圧倒的多数がそれに気づいていてもあえて知らないふりをしているだけであろう。しかもここにきて不正に関する衝撃的な報告書が刊行され、その内容が議員や米国民に少なからずの衝撃を与えている。12月17日にナバロ(Peter Navarro)大統領補佐官は大統領選の不正に関し6つの観点から分析した「ナバロ・レポート」を公表した。(“The Immaculate Deception: Six Key Dimensions of Election Irregularities,” (The Navarro Report), (December 17, 2020.))36ページからなる報告書であるが、問題の6つの激戦州で勝敗を覆す不正が行われたことを明白に記している。6つの観点とは、1.明白な不正投票、2.投票の不正な取扱い、3.異議ある不正プロセス、4.正当な手続き条項により保証される権利に対する違反、5.投票機の異常発生、6.統計上の大規模異常などであった。
 
 「ナバロ・レポート」によると、激戦州の不正件数は想像を超える規模に及ぶ。アリゾナでの両候補の獲得票差は1万457票であるが、不正件数は10万件以上に達するとされる。ジョージアでの獲得票差は1万1779票であるが、不正件数は40万件以上に及ぶとされる。ミシガンでの獲得票差は15万4188票であるが、不正件数は不明である。ネバダでの獲得票差は3万3596票であるが、不正件数は10万件を超えるとされる。ペンシルベニアでの獲得票差は8万1660票であるが、不正件数は60万件以上とされる。ウィスコンシンでの獲得票差は2万682票とされるが、不正件数は20万件以上に達するとされる。これまで断片的に伝えられてきた不正件数を合算すれば、同報告書にあるとおり、空前規模で深刻な不正が行われたと推察される。もしそうであるとすれば、大統領選の勝敗が確実に覆ることになる。大統領選は盗まれたと言うべきであろう。1月6日に米上下両院議会が開催され各州政府から同議会に送付された選挙人認定証に従い選挙人投票を数え、ペンス副大統領(上院議長)が次期大統領を正式に発表する手続きになっている。
 
 この間の12月14日にトランプ大統領法律顧問のミラー(Stephen Miller)氏はトランプ陣営の今後の方針について語った。(“Trump Insists Election Challenges are “Not Over,” Fox News, (December 14, 2020.))ミラー氏は、12月14日に各州政府が確定した選挙人認定証と別に、ペンシルベニア(選挙人:20人)、ウィスコンシン(選挙人:10人)、ミシガン(選挙人:16人)、ジョージア(選挙人:16人)、ネバダ(選挙人:6人)、アリゾナ(選挙人:11人)など激戦州の共和党はトランプ候補に投票した選挙人認定証を独自に作成することを明らかにした。これらの独自の選挙人認定証を連邦下院に送付するとしたことから、各州政府が確定したバイデン候補を次期大統領とする選挙人認定証を同封した封書と、激戦州の共和党が確定したトランプ候補を次期大統領とする選挙人認定証を同封した封書の二通を連邦下院は受け取ることになる。その結果として、1月6日の米両院議会でこれまでになかった混乱が発生する可能性がある。(つづく)
 
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