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2020-09-25 20:51

(連載1)米ドルは基軸通貨を維持できるのか

岡本 裕明 海外事業経営者
 米ドルがこのところ他通貨に対して弱含みになっていることで米ドルの覇権が揺らいでいるのではないか、という見方が一部であります。本当でしょうか?少し検証してみましょう。ドルの相場と言えばドルインデックスがその代表的指標になると思います。ドルインデックスにはいろいろなものがありますが、その違いは比較対象とする他国通貨の種類の数であります。代表的なインデックスの一つ、DXY指標で見ると概ね93程度。これが今年の3月に102のピークを付けてから下落しているのでドル覇権への疑問の始まりだと思います。
 
 リーマンショックの時、ドルインデックスは71ぐらいまで下がっています。よって現在の93は決して他通貨に対して極端な弱含みではありません。リーマンショックでドルが弱くなったのは、利下げと長期にわたる低金利へのコミットメントに対する市場の衝撃があったものと思われます。今回インデックスが93まで下がっているのも、FRBが長期的に、かつインフレが2%程度を安定的に維持するまで利上げをしないといっていることがドルの価値が下がっている要因の一つだと思います。
 
 ただ、ドル覇権への疑問がわくもう一つの理由は、米中関係の悪化に伴い中国が元のデジタル化の実用にむけて準備を進めていることや、経済のデカップリングが仮にある場合の貿易等のやり取りで仮想通貨へのシフトが考えらえることなど、代替通貨の利用が進む可能性があるからです。例えば、香港問題が起きた今年、仮想通貨でステーブルコインのテザーは9月半ばには時価総額が年初から4倍の150億ドルになったとされます。なぜビットコインではなくテザーなのか、と言えば同通貨がUS㌦の資産を担保にした通貨だからとされています。(それを疑問視するアメリカなどでその事実関係の調査が進んでいます。)事実、テザーの相場はごく一時期を除き、ほとんど動かない相場です。この1年を見ても1%動くのはまれで概ね0.5-0.3%程度に収れんしています。ある意味、世の中で最も安定している通貨の一つとも言えます。
 
 ではなぜ、テザーが今年急激に取引量を増やしたかと言えば、香港や中国からドルを含む他通貨への移動にこれを介したため、とみる向きが大きいようです。中国元は、かつてのブラジルの通貨のように厳しい持ち出し制限がある通貨であって国内専用通貨のようなものであります。となれば元を流通可能通貨に換えるプロセスでテザーが利用されたのは、至極当然の流れのように思えます。専門家は、米ドルの覇権に疑問はつくが、それに代わる通貨が今のところないとほぼ口をそろえて言います。それは特定政府の信用通貨という枠組みから発想が抜け出せないからなのでしょう。かつて金や銀が通貨としての役目を果たしていました。これは世界の中で政府信用という発想がなかったため、世界で共通して価値があると認める金や銀を国家間の信用の媒介手段に使ったわけです。(つづく)
 
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