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2020-08-11 18:25

政治家の中国理解

中山 太郎 非営利団体非常勤職員
 李登輝さんがお亡くなりになり、最近の中国の目に余る横暴ぶりに、日本のマスコミでも台湾びいきの論調が多くなった。米国は、閣僚を初めて訪台させ、台湾を持ち上げている。日本人が忘れてならないのは、国同士の付き合いは、個人のそれと異なり、そこには冷徹な計算が秘められていることだ。日米とも、中国と台湾のはざまで、色々苦労させられて来た。

 ざっと思い出すと「周鴻慶事件」がある。中国の貿易代表団の通訳の周が、いったん台湾へ亡命を図るが、その後翻意し、中国へ帰国した事件だ。今の時点では、台湾側のハンドリングの悪さから起きたものということが判明している。しかし、台湾側は激しく日本を非難した。池田総理は、師匠格の吉田元総理に頼み込み、訪台し、話を纏めてもらった。今の日本の右側の論者はその食事の記録を見ると案外、中国料理が好きでよく召し上がっているが、吉田は、若き日の中国滞在の記憶から、中国料理は決して食べなかった。

 蒋介石の宴席もすべてお断りした。飯倉の外交史料館には、吉田が中国古典に如何に通暁しているかの資料も残されている。安倍総理の祖父の岸信介も、その書は中国人の敬愛の的だ。香港のある富豪が、岸の書を大事にしていることを知っている。その岸も、総理在任中、長崎の百貨店での催事の際、右翼団体の男により中国の国旗が引きずりおろされた事件で、中国側から激しく攻撃を受け、中国は日中貿易を停止させる措置を講じたりした。今の資料では、台湾出先機関が、日本の右翼とつるんで故意に起こしたことが分かっている。吉田にしろ岸にしろ、その中国の古典理解、中国理解の深さは、並みの中国通をはるかに超えるものだ。

 では、今の政治家はどうかだが、日中戦争勃発の地の北京の盧溝橋のそばに「中国人民抗日戦争記念館」がある。北京を訪問した日本の総理は、ほとんど訪問し揮毫するのが常だ。村山総理は、「歴史に向き合ってー」と中国好みの文言を書いたが、肝心な、歴史の歴の字が間違っていた。小泉総理は2001年春の総裁選で大衆人気の田中真紀子氏とタグを組んで見事当選、その後の北京訪問では中国側の大歓迎を受けた。当時の江沢民主席の言葉として、これだけ日中友好に熱心な日本の政治家は初めてだと述べている。小泉の記念館での揮毫は、他の総理とは段違いの1字のみであった。「恕」(読み、ジョ)、これを漢学の専門家に聞いたところ、通常「忠恕」と2文字で使うのだがー。中国側に日本の立場を思いやって頂きたい、そして許せと言う意味かー」と絶句していた。
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