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2020-06-08 17:34

(連載1)いわゆる「非伝統的安全保障」について

武田 悠基 日本国際フォーラム研究員
 世界のグローバル化が進んだ冷戦終焉以降、世界的な大国間の軍事的対立懸念が低減した一方で、非国家・準国家主体による越境的な脅威が浮上してきた。安全保障学上、国家間の対立、特に軍事的な分野が研究の「伝統的」関心事項であったことから、非国家・準国家主体に起因する国家への脅威は便宜上、「非伝統的」安全保障と呼ばれている。環境問題や国際犯罪(テロ、海賊、違法取引等)、地域紛争、難民問題などを含む破綻国家の問題等がその範疇に入ろう。
 
 研究論文等での英語表現では、「unconventional security」との表記が10年ほど前まで一般的であったが、この数年、もっぱら「non-traditional security」と表現されるようになっている。日本語ではどちらも「非伝統的安全保障」である通り、中身は同じである。単なる表現の問題ではないかと思われる向きもあろうが、これは実のところ、安全保障認識の連続性に関わる重要な問題であると思われる。
 
 まず現象面としては、近年、安全保障概念の射程が拡がったことにより、古典的な安全保障の範疇に収まらなくなった数々の問題が注目を浴びるようになった。そこでそうした問題を区別して表すために「unconventional」が使われていたところ、いつからか「non-traditional」に置き替わったということである。この変化については、個別の安全保障上のイシューを「通常」か「非通常」かという定性的な尺度で捉えるかたちに、時系列における特定の時点を基準に「伝統」から「非・伝統」へと移行したと捉える時間的ベクトルの要素が加味、または置換されたことを意味する。
 
 たとえば、伝統的安全保障の典型である軍事分野では、「conventional」という語は「通常戦争」や「通常兵器」という用例にみられるように、これまでも使われてきた。それに対して、「unconventional」は「非対称な」あるいは「核を搭載した」といった意味合いを持つ。これは元来、「conventional」と「unconventional」の区別があったわけではなく、後者が考察されるようになったときに、それまでのものと異なるものを区別するために、前者を「conventional」なものとして認識し、その上で「unconventional」なものについて語られるようになった、という経緯があろう。(つづく)
 
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