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2020-06-02 01:35

特筆すべきは「死者の少なさ」ではなく「感染率の低さ」

伊藤 洋 山梨大学名誉教授
 「米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)は5月14日、東京発の論評記事で、日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり『(対応は)奇妙にもうまくいっているようだ』と伝えた。(2020/05/15共同通信) 褒められたのか?くさされたのか?よく分からないが、こう書かれてみれば「それはそうかな?」と思わせる記事ではある。
 
 5月17日現在のデータを見ると、クルーズ船を除く国内感染者総数16,112人、全人口1億2616万1000人に対する感染率は0.013%、そのうち死亡者数744人で感染者の中での死亡率は4.62%。片や世界を同じ日で調べてみると感染者数は約471万人、死亡者数31.5万人、同死亡率は6.7%と日本よりはるかに高い。また、アメリカのそれと比べても感染者数152万人、感染率2.74%、死亡者総数は89,908人でその死亡率は5.91%と日本よりもはるかに高い。同上の記事は上に続けて「日本は中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンスの確保も中途半端と指摘。感染防止に有効とされるウイルス検査率も国際社会と比べ低いが『死者数が奇跡的に少ない』と評した。さらに『結果は敬服すべきもの』とする一方、『単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない』と述べた」(同上)ともある。どうもこれは褒めてくれようというのでもなさそうで、大してうれしがる必要のない記事だ。
 
 日本における新型コロナウィルス感染者総数は、感染検査まで「4日待機」という「国民が勘違いした」(加藤厚労大臣発言)とする初期対応のまずさから政府への信用度が低くて不明の感もぬぐえないものの、さりながら感染者数を隠しきれずにもいて最終的に出てきたその数値は正しいとみてよいのではないだろうか。だとすれば、この国のコロナ対策状況で特筆すべきは「死者の少なさ」ではなくて、国際比較で「感染率の圧倒的な低さ」にあるのではないか。多少の誤魔化しがあっても圧倒的な低さだ。この低さの原因はなんだったのか??特に証拠もないが、筆者はこれは「マスクが消えた」という頻々と伝えられた報道にあったのではないかと推量している。マスクの大好きな日本人にとって、とりわけ需要期にこつぜんと消えたマスク。その無防備への恐怖が逆にマスクなどしたこともない人々にまで着用を徹底させ、これが結果的に感染抑制に寄与したのではないか。と言っても、マスクなどコロナ予防にそれ程役立つわけは無いが、マスク報道の効果としてマスクを付けることとともに、感染への恐怖を扇動したこと、このインセンティブこそが結果として三密忌避と感染率低下に寄与したのではなかったか。
 
 しかし、感染率の低さは「コロナ戦争春の陣」で国内に抗体を持つ人口を極小化してしまったこと。次なる「秋の陣」にまたやり直しの対策を講じなければならないということを意味する。良かったのか悪かったのか。一難去ってまた一難、やっぱり、この米紙記事は我ら日本人を褒めてくれたのではなかったのだろう!?
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