国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2020-05-30 21:07

露紙「日本は日露平和条約に期待せず」に一言!

飯島 一孝 ジャーナリスト
 日本外務省は5月19日、2020年版外交青書の中で北方領土の主権を明記し、2019年版で削除した法的立場の記述を復活させたが、ロシア紙「独立新聞」は同日付の電子版で「日本政府はもはやロシアとの平和条約締結を期待せず」との見出しで伝えた。この報道は何を意味するのだろうか。
 
 独立新聞の電子版によると、日本外務省は毎年報告する外交青書の中で、北方領土の主権明記を定式化していたが、昨年の報告では「北方領土は日本に帰属する」との表現が削除され、ロシアとの平和条約締結への期待を含ませていた。ところが、今年の報告では北方領土の主権明記が復活したことから「日本政府の平和条約締結への期待が消えたのだろう」と書いている。独立新聞はロシアの中でも政府寄りではない、中立的な新聞とみられている。独立新聞によると、ロシアとの領土問題が日本側に有利な条件で解決するという期待が日本で浮上したのは、2014年のウクライナ危機後である。そこで安倍首相はロシアから譲歩を引き出せると判断してプーチン大統領と会談を重ねた。そして2018年11月、安倍首相は大統領との会談で「われわれはこの問題を次世代に引き継がないことを確認した」と述べ、ロシアとの平和条約締結を誓った。これを受け、日本メディアは2019年1月、ロシアが日本側に2島返還を提案したと報じた。
 
 だが、ロシア極東日本研究センターのキスターノフ代表は、ロシア側の現在のスタンスについて「プーチン大統領が2019年6月に述べているように、クリル諸島(北方4島)には日本に引き渡す島はない。日本側が第二次大戦の結果を認めるのが先決だ。こうした条件では日本側が平和条約締結を受け入れないだろう」と指摘した。その上で、同代表は「日本側は北方領土交渉はまだ終わったわけではないと思っているが、安倍首相自身は任期中の解決は無理だと思っているに違いない」と述べた。
 
 安倍政権としては、2019年の外交青書で北方領土の主権明記を削ったため、保守層の反発を食らったことから今回、復活させたのだろう。だが、ロシア側が、この変更には裏があると深読みするのも無理はない。このところ、日本は韓国や中国との関係が良好ではないうえ、新型コロナウイルスが猛威を振るっているだけに、ロシア側は日本政府の平和条約締結への熱意が冷めたと理解したに違いない。だが、その理解は間違っているとロシア側にあえて言いたい。日本はすでに75年間も待っているのだから。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会