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2020-04-21 23:55

(連載1)WHOの迷走と国際機関の存在意義

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 新型コロナウイルスが武漢で明らかになったのは昨年末のことである。その後、中国の武漢市において様々なことがおき、なお先が見えない状況にあった。当時、世界各国は1月25日に春節を迎える中国に対して警戒感をあらわにしていた。それに対してのWHO(世界保健機関)の対応は時系列で以下の通り。
 
(1)1月23日、WHOは中国でのヒトからヒトへの感染は主に家族や患者の治療にあたる医療従事者にとどまっているほか、中国の外ではヒトからヒトへの感染が確認されていないことなどから、このケースが現時点では「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」には該当しないとした。(2)1月31日、中国国外でヒトからヒトへの感染が確認され、その他の国々で感染者数が増加したことを受けて、WHOは流行事態に関して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (PHEIC)」を宣言した。(3)2月2日、WHOは世界的に伝染病が流行するパンデミックのように誤った情報が拡散される「インフォデミック」が新型コロナウイルスに便乗して起きているとする注意喚起。(4)2月24日、WHOは「パンデミックとは呼ばない」事を発表した。(5)2月25日、WHOは「世界は起こり得るコロナウイルスのパンデミックへの備えをますます進めるべきである」と宣言。(6)2月28日、WHOの当局者は全世界規模でのコロナウイルスの脅威の評価が「高い」から警戒・危険度評価基準のうち最高レベルの「非常に高い」に引き上げられることを発表した。パンデミック宣言は「我々が本来認めているとおり、地球上のすべての人間がウイルスに曝されている」という意味になるだろうと話した。(7)3月31日、パンデミック宣言。
 
 これが今回の一連のWHOの対応である。これが公衆衛生と病原菌感染症の専門家たちの「予防措置」と「警告」である。これで防げなかった結果が、現在の世界情勢である。イタリアを抜き、世界最大の新型コロナウイルスの死者を出した国の大統領であるトランプ氏は当然にWHOに対して怒り心頭である。実際、少なくとも1月25日の段階で武漢市民または中国人が海外に渡航することに対して警告を発するべきであったということは間違いがない。中国政府が巨大都市の封鎖を断行するほどの未知のウイルス性肺炎の報告を受けながら、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (PHEIC)」には該当しないと判断したWHOの認識は明らかに間違いだった。
 
 ここまで裏目に出ると、テドロス事務局長は中国の味方のふりをしながら中国へのネガティブキャンペーンを成功させた反共の敏腕プロモーターなのではないか、と思ってしまうほどだ。とまあ本当にひどかったのだが、世界大に被害が広がったことは、国際社会に大きな禍根を残すことになろう。事実、テドロスは、これだけ世界に病原菌をバラ撒いた中国の政策を「素晴らしい」と評価し、なおかつ「WHOに対するデマを流した」として、台湾を名指しで非難したのである。まあ、完全にヒールの立ち回りでありおかしな事務局長としか言いようがない。(つづく)
 
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