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2007-06-15 12:32

連載投稿(1)ハイリゲンダムから洞爺湖サミットへ

廣野良吉  成蹊大学名誉教授
 日本政府は、本年1月26日の国会における安倍総理の施政方針演説で既に国民に約束したように、今月「環境立国戦略」を発表した。この「戦略」の目的は、「国内外あげて取り組むべき環境政策の方向を明示し、今後の世界の枠組み作りへわが国として貢献する上での指針」(施政方針演説)の策定にあった。特に、本報告書において今後1、2年に実施すべき対策として掲げられた「世界の地球温暖化対策」が、今月6-8日にドイツで開催されたG8による本題の議論と合意形成に大いに役立ったことは喜ばしく思うと同時に、後述するように、来年のG8主催国首脳として、安倍総理が自らに課した国際的責任の重みをひしひしと感ぜざるを得ない。世界は、本年のG8合意に基づき、安倍総理が、世界の地球温暖化対策の新たな枠組み作りで、如何なる具体的提案を洞爺湖サミットでするのかを既に注目し始めている。本論では、安倍総理が来年のG8で明確にしなければならない「世界の地球温暖化対策の新たな枠組み」について率直に述べさせて頂きたい。

 まず安倍総理提案は「2050年までに、世界の現状のGHG年間排出量の半減」を長期目標としているが、この点については2点だけ明白にすることが必要である。安倍提案は、「現状」をIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が算定した2005年の世界全体での人為的GHG年間排出量(72億炭素トン)と考えれば、その半減すなわち36億トンを目標としていることになる。ただし、このためには、京都議定書を離脱した米国や、議定書を批准しない豪州はもちろん、世界の途上国、特に主要なGHG大量排出国である中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ共和国等新興経済諸国‘Emerging Countries’も削減義務を負うことが大前提である。さらに、IPCCは、地球のGHG年間吸収可能量を31億トンとしているので、2050年まででも排出量と吸収量の均衡化は達成できず、5億トンほど上回ることになる。

 問題は、2013年に始まるポスト京都議定書期間では、現在ベルリン・マンデートの下で削減義務を負っていない途上国、特に大量排出新興経済諸国も、安倍提案にあるように削減義務を負うことに合意するかどうかである。本年のG8では、上記の大量排出新興経済諸国首脳との会合が設定されたが、そこでのこれら諸国首脳の反応からすると、一率の削減義務には反対であり、たとえ国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)での「共通だが差異ある責任」を負うという原則に同意したとしても、その具体的数値は定かでない。安倍提案も、このことは織り込み済みであり、2013年以降の新たな国際的枠組みでは、第2原則として「各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みにすること」を掲げている。(つづく)
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