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2020-01-21 14:46

総統選挙後の日台関係について

中山 太郎 非営利団体非常勤職員
 今の日本の報道は、大国中国の横暴に自由と民主の台湾が勝利したと、ほとんどが浮かれたものが多い。しかし、台湾の知人たちや現地の動きからは、物事はそう簡単ではないことがうかがわれる。まず、親日の一般台湾の人々と違い、民進党、国民党とも日本への冷淡な姿が垣間見られる。蔡英文総統は、明らかに、現地の米大使に相当するAIT所長への対応と、日本からわざわざ駆け付け祝意を評した日本台湾交流協会の会長大橋光夫氏との対応の仕方で差をつけていた。これは、以前、安倍総理が習近平主席から受けた苦虫を嚙み潰したような表情で握手を受けたのを彷彿させるもので。やはり同じ中国の血をひいているのだと勘繰りたくなる。野党国民党の韓候補も、選挙取材のためにインタビューを求めた松田東大教授ら一行に対し、当日何回か会見場所を変えたりという中国特有の嫌がらせを行っている。
 
 米トランプ政権は、今中国との全面的な対立状態にあり、その反面台湾へ肩入れをしだしてきている。台北におけるAIT事務所を大々的に拡張し、海兵隊員も駐在させるなど、大使館並みにしたりしている。勿論、米以外国々は中国からの報復を恐れ、そう簡単には追従はできない。それにこたえ、今台湾当局は、米からの政治家、学者、ジャーナリストなどオピニオンリーダーたちの招待に大金をはたいて努力している。台湾の知人によれば、今、中国は台湾へつらく当たり、反面日本へは暖かい態度なので、やっかみがあるとのことだ。台湾は日本以上に、中国との経済関係は深く入り組んでいるし依存している。彼は、今回の民進党総統の大勝で、中国が益々頑なになり強硬に出てくることを心配している。そもそも中国内戦で、国民党が台湾へ避難した後、米の対台湾政策の一番重要なことは、台湾の大陸反抗を絶対阻止することだった。米が中国との戦争に引き込まれないためだ。
 
 台湾の知人は、70年代の初め、ニクソン・キッシンジャーコンビのドテン返しによる中国との握手を忘れない。米政府は直前までをそれを隠し、国連における安全保障常任理事国からの台湾外し阻止に、日本政府に仕事を全面的に押し付け努力させていたのだ。そして乗り込んだ中国で、ニクソンは中国による将来の台湾統一について、平和的にと言う文言を入れつつもOKを出したのだ。これを日本も踏襲して、その直後訪中した田中政権が、電光石火の国交回復にまでこぎつけてしまった。当時、西側の盟主としての米では、世界の注目、国内の厳しい声に侃々諤々の議論が出て、ニクソン訪中から7年後、米国内法での台湾関係法を成立させ国交を回復させた。この時、田中政権の中国市場へ米より先に乗り込んで行った利益獲得に対し、キッシンジャーなどは大分日本、田中政権非難を行っている。
 
 台湾の知人が心配するのは、大国の論理で引き回される小国台湾の運命だ。今、中国の軍事費は20兆円程度で、米の70兆円には及ばないまでも、没落するかもしれない米に対し、今少し経済に陰りはアリと言えどまだまだ盛り返す力は残っているかもしれない中国がそのうち追いついたとき、米は自由と民主の価値観だけのために自国を犠牲にしてまで、助けてくれるのか考えてしまうとのことだ。いま戦争の質も転換しつつあり、サイバー攻撃、電磁波攻撃、そして宇宙での戦いと従来の兵力とは異なる次元に変化しつつあるとの見方もある。AI、ビックデーターなどは専制国家中国と親和性があり、自由主義圏より有利だ。未来は我にありと中国が考えたとしても、不思議ではないということだ。米国人の知人からは、今台湾側から招待を受けている学者、ジャーナリストなどから、招待主にお世辞のつもりで、台湾擁護発言や、習近平の日本訪問に向けて、日本に対し自由と民主を踏みにじる裏切り者などといった厳しいフライイング発言も飛び出す可能性がある、その時、日本は慌てず冷静に対応することが肝要だと忠告していた。
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