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2020-01-16 12:26

(連載1)反日問題を考えてみる

中山 太郎 非営利団体非常勤職員
 1月10日付けの姉妹e-論壇「百家争鳴」に掲載された荒木和博氏の「作られた『反日・嫌韓』に惑わされるな」は、いつもながらの簡潔・明瞭かつポイントを突く内容で感心させられた。これに触発されて反日問題について少し考えてみた。マスコミ報道では、最近の韓国での反日を、数年前の中国での反日と同じようなものとしてとらえているようだ。2010年の中国の反日運動最盛期には、北京のタクシーは日本人と見ると軒並み乗車拒否だった。困った我々は「韓国人だよ」という顔をして乗車したのだった。一方、今回ソウルでは、昨年の運動最盛期に訪問した知人たちに聞くと、タクシーの乗車拒否など一つもなかったと述べていたので、政治体制の違いからくるのかな、韓国は何といっても民主主義に国なのだと考えたりした。
 
 私は、中国には1970年代から断続的に滞在した。仲が良くなった中国人たちによく「なぜ中国は、日本が最大の悪者と見るのか」を質問した。思い出すままに列挙すると、次の答えが出てきた。「南京はじめ、日本人が一番残虐行為を働いたからだ」、「イギリスのアヘン戦争など西欧の諸国の侵略もあるが、やはり日本が最新の侵略国だからだ」、「そもそも、今共産党政権が統治しているのは、日本の侵略を食い止めたからで、日本叩きは、存在理由の証明でもある」、「白人の蛮行は、まあしょうがないと考えても、同じ黄色人種の日本にやられたのは我慢できないのだ。ほら、他人同士の喧嘩より兄弟喧嘩のほうが始末におえないと言うではないか」、「悲しいかな、今世界を主導するのは欧米思想であり欧米諸国だ。彼らが一等国民で、我ら東アジア諸国はまだ二等国民だ。一等国民同士は、仲が悪そうでいて大事なときには手を握りあい権益を確保する。一方、二等国民同士は互いにいがみ合うのだ」、などの回答を得た。
 
 私は、また、日本人は自分たちが特に虐めにあっているとの被害者意識が強すぎる場合もあると思う。2000年代のはじめ、中国第三の都市広州に滞在したが、観光客用の地図に、抗英記念館と出ている。日本の浅草のような下町にあり、清朝時代の官僚の遺品やアヘン戦争で使用した武器などの展示をしている。しかし、半分は道教の拝礼場として使われていて、訪問した時には、品の良いご婦人がお参りをしていた。記念館内部にはそのほか、アヘン戦争当時の逸話などを簡単な図とともに展示していた。
 
 憎き英兵をやっつけて家畜の肥溜めに突き落としたなどとえんえんと反英的文章が書いてあった。このことを知り合いの同市駐在の英国人に話したところ、彼は「我々英国人はほとんどが漢字が読めない。無視だよ」、「そうすると中国側も張り合いがなくなりそのうち展示もやめるかもしれない」と述べた。確かに日本人は微に入り細に入り報道し、それが現地に下手にフィードバックされ、騒ぎが増幅することはよくある。(つづく)
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