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2019-11-29 14:16

カナダと中国との関係から考える日中関係

中山 太郎 非営利団体非常勤職員
 最近の米国の対中国強硬姿勢はとどまることなく続いている。中国との経済関係維持の極めて難しいかじ取りに悩む米の友好国同士として、最近の加中関係について考えてみたい。カナダは、中国にとり、中国企業、人的交流に最も開放的な国として人気の国だ。加は、米国の先兵として、70年には正式な外交関係を開始している。そもそも加は、既に60年代初めより外交関係のない中での対中貿易に熱を入れていた。ここら辺は、親中日本企業による日中貿易の図柄と類似している。
 
 加は、外交の一つの武器として、医師ペチューンの功績を存分に利用できた。同医師は、38、39年の2年間だが、当時の抗日戦争のさなか人民解放軍の医療活動に功績があり、その活動中に倒れたのだ。毛沢東が文章で同医師との友情を称えたことで、中国における教科書にも取り上げられ、中国の人々に広く知られるようになった。加は、こうした関係を利用して当時文革の荒廃の中、生活に苦労していた外国人滞在者へ様々な情報を流してくれて助かった。例えば、中国で針治療をする場合は、針の使いまわしをするので、エイズ、その他のばい菌に汚染する恐れがあること、医療の治療を受ける時には、注射針は必ず持参するようになど教えてくれた。日本がやれば、反中国言動だといわれるところを、白人国だと遠慮したのか、中国は寛大だった。90年代、北京で仕事をしていた時、よく当時は断水が起こったが、昼間誰かが事務所の水道の蛇口を占め忘れ、夜間急に水が出て、階下の住まいに浸水した時、階下に住む加の商務参事官は、慌てて飛んで行き謝る私に、こちらのほうは大丈夫だ。中国では色々苦労するねと却って慰めてくれた。

 小生の知人に、加のフランス語圏のケベック州の名門校、ラバール大学に奉職するものがいた。同人はもともとは商社マンだったが、現地でカナダ美人と結婚して、日本語教師として勤めていたのだ。同人のつてでケベックの医師とも知り合いになれたが、同州では医学部学生はコンピューターで人体の解剖は勉強できるが、実際の人体を使用した解剖の実習には米での研修が義務付けられていると述べて居た。加の米とは離れられない絆を知らされた。それで想起するのは、90年代の村山政権時代に、今年チリでの開催が取りやめになったAPECが大阪で開催することになったが、当時、対中傾斜を強めていた米民主党のクリントンはさっそく不参加を表明、それに続いて加のクレンシェ首相も不参加を表明した。大国の米には逆らわないが、カナダには一言文句を言おうと考えたのか、外交音痴の村山首相がぶら下がり会見で、変な奴と述べたようだった。これが、現地ケベックでは大々的に報道された。クリントンとは違い、クレンシェには言い分があった。直前の世論調査でケベック州の独立気分が大いに盛り上がっていて、その対処に外遊どころではなかったのだ。普段は反政府の空気が強い同大学でも同大学出身の首相に同情的で、私の知人は、日本はカナダの事情を一つも分かってくれないとだいぶ文句を受けたと述べていた。

 いずれにしろ、極めて蜜月にあった加中関係も、昨年末のファーウエイ副会長が米のイラン制裁に違反した疑いで逮捕要求を受け、実施したことで一挙に暗転した。中国政府は猛烈な抗議するとともに、中国特有な様々な嫌がらせを行っている。加外交官をはじめ多くのカナダ国籍の人間を拘束逮捕しだしてきている。一部カナダ製品への不買運動も起こっている。これらの状況は、これからの日中関係に参考になると思われる。カナダは、しぶとく正論は譲らないで頑張っているが、日本はこれが果たして出来るのか。
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