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2007-06-01 01:01

ASEAN内部に「逆格差」生起の可能性

河東哲夫  Japan-World Trends代表
 ASEANはこの8月で結成40周年を迎える。40年前にできた時は、「これはアメリカの差し金で、『反共連合』をアジアに作ったのだ」という論評がソ連や日本のマスコミには出た(当時はベトナム戦争たけなわだった)。これまた8月でちょうど30周年を迎える「福田ドクトリン」には、「(日本は)ASEANの連帯と強靱性強化に協力し、インドシナ諸国との相互理解の醸成により東南アジア全域の平和と繁栄に寄与する」ことが、日本の対東南アジア政策の三つの柱の一つとして入っている。つまりASEANができた時から、東南アジアの共産圏諸国との関係はこの地域の主要な政策課題だったのだ。

 その後、ベトナム、ラオス、カンボジアは95年から99年にかけていずれもASEANに加盟し、ここに福田ドクトリンの理想は実現されたかに見えた。だがベトナムはともかく、ラオス、カンボジアには外国からの直接投資もほとんどなく、この両国はミャンマーとともにASEAN内部の格差の象徴的存在とされてきた。

 ところが今年、ベトナム中部からラオス、タイを通ってミャンマーに至る「東西経済回廊」ハイウェーが開通したことを契機に、こうした格差が縮まる可能性が現れた。内陸のラオスまでが、中国南部、ベトナムの工場との水平分業の立地先として経済性を有するものになってきたのだ。だが皮肉なことに、こうしてベトナムをはじめASEAN内の旧共産諸国が上げ潮にある時、ASEANの原加盟国であるタイ、インドネシアなどは沈滞したムードの中にあり、このままではいつか「逆格差」が語られるようになるかもしれない。

 このようにしてASEANの存在が霞んでいくことは、日本にとって好ましいことではない。ASEAN原加盟国にも頑張って欲しいし、またミャンマーへの外国の積極的関与を不可能にしている同国の人権問題については、原則論的対立に終始せず現実的な解決を探っていくべきである。
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