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2019-11-06 20:45

金正日を否定した金正恩の意図

荒木 和博 拓殖大学教授
 10月23日付労働新聞に掲載された金正恩の金剛山観光地区現地指導の記事は、文在寅をコケにして、さらに「先任者たち」を否定するという内容でした。もともとこの金剛山観光開発は、2000年(平成12年)6月の金大中・金正日南北首脳会談に始まる南北和解の象徴で、現代グループを使って大規模開発したものです。その投資だけでも日本円で数百億円と言われます。表に出ていない韓国政府からの資金とか現代からの裏金とか合わせればさらにそれをはるかに上回る金額でしょう。
 
 文在寅大統領からすればチョグク法相辞任・その妻逮捕でますます国内が厳しい状況になっているところに、金正恩から「金剛山があたかも北と南の共有物であるかのように、北南関係の象徴、縮図のようになっており、北南関係が発展しなければ金剛山観光もできないことになっているが、これは完全に誤ったことであり誤った認識だ」と言われては茫然自失でしょう。明らかに金正恩の文在寅への当てつけで、おそらくは「お前『トランプなんか簡単に制裁解除させられる』って言ってたじゃないか。この嘘つき野郎」とかいう感じなんでしょう。
 
 しかし、この記事でさらに驚くのは「先任者たち」の否定です。前述のようにこの地域の観光開発をやるのを決めたのは父金正日であり、複数形でぼかしてありますが、明らかに父親に対する否定です。「先任者たち」という言葉も微妙で、金正恩自身さすがに父親の名前を出して批判するのは憚ったのか、あるいは実際に金正恩が直接父親を批判したのを周りがまずいと思ってごまかしたのかは分かりませんが、「国力が弱い時に」というのは明らかに1990年代後半からの「苦難の行軍」の頃を指すのでしょうから、いずれにしても北朝鮮の人間が読めば金正恩が金正日を否定したということは誰にでも分かります。
 
 記事にも出てくるように同行した幹部たちも「金正恩同志、全くでございます」とお追従したのでしょうが、周りで金正恩の話を聞きながら手帳に「金正日を否定」とか書いていたのか、覗いてみたい衝動に駆られます。金正日自身、実質的には父金日成を殺したようなものですが、それでも父親の権威があってこその自分だとは分かっていましたから父親を否定することは最後までありませんでした。金正恩はそれをやってしまったわけで、彼の中で極めて重大な決断があったはずです。金正恩の外交姿勢に大きな変更がある可能性も十分あり、今後どうなるのか、注視すべきです。
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