国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2019-07-30 21:24

(連載1)イラン緊迫、それでも戦争にはならない

宇田川 敬介 作家・ジャーナリスト
 雑誌や私以外のジャーナリストに、よく「イランとアメリカが戦争をするのではないか」と聞かれる。まあ、そのように考える人も少なくない。また、日本のマスコミは、アメリカとイランが戦争を始めることを期待するかのような報道を平気で行っている。民放がそのような報道をしていると、日本に来ているアメリカ人やイラン人は、あまり良い気持ちがしないであろう。もちろん一触即発になるような行動をとっているのはその両国なのであるが、しかし、それを軍隊も持っていないし、戦争になったら困るはずの日本が、戦争をあおるような報道を、それも衛星放送で世界の人々が見ることができるような状況で行っていること自体に、なんとなく違和感を覚えるのである。
 
 日本のマスコミや野党の人々は、今年5月の日米首脳会談の後に安倍首相がイランに飛んで行って和平に寄与する交渉を行ったこと、それに対してハメネイ最高指導者との会談の最中に日本のタンカーが襲撃されたこと、それらを受けて「安倍が交渉をしても和平がうまくいかなかった」ことについて、日本国内の政局という狭い視点で与党批判をしている。だが、はっきり言って、イランの政治体制や国情に精通していて「交渉できる立場にある」というだけでも、政権は特筆すべき外交力を示している。実際に、ロウハニ大統領、ハメネイ最高指導者と会談・交渉を行うことができることは、間違いなく世界の高い評価を得ることのできるものであり、そのことを批判している人々は、外交の現場を知らないとして、世界の批判の的になるほどのものいいであると自覚すべきだ。
 
 日本のマスコミは、イラクのバクダッドやバスラで爆破テロが起きて人が死んでいる状況を報道しない。これは、単純に日本のマスコミは、安全なところでしか取材をしない、リスクをとって取材をして最も危険な場所の真実を報道する、ということをしないからだ(フリー戦場ジャーナリストのような人々が暗躍し、その人々が、拉致されたり拘束されたりするのは、その延長線上の事象である)。取材のありかたがそのような状況のマスコミが、イランのことをどれくらい知っているのであろうか。そして、そのことを知ったうえで、外交交渉を行うことの難しさを知って、批判しているのであろうか。
 
 さて、イランは日本を信頼している。以前も日章丸事件といわれる百田氏の「海賊と呼ばれた男」の原案となる石油取引と裁判の事件が存在した。そのようにしてイランの経済行為は米英に制限されながらも、日本という国に助けられてきているのである。その日本が和平に動いたということは意味が大きい。アメリカは安倍首相の行為を無視して戦争をすれば、今度は和平に動く人がいなくなる。何しろイスラム教シーア派の国は、シリアもイエメンも内戦中であり、そのためにイランとアメリカや欧米を橋渡しする国はないのである。そのように考えた場合には、日本という切り札を捨てるわけにはいかないし、その無駄遣いはできない。相手が信頼しているアメリカ側陣営の国をうまく使わなければ、イラクやアフガニスタンのように泥沼化してしまい、また、共和党の票が落ちてしまうのである。(つづく)
 
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会