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2019-03-30 22:53

(連載1)「アベノミクス」は安倍政権最大の功績

加藤 成一 元弁護士
 2012年12月の総選挙の結果、3年3か月続いた民主党政権が終焉し、代わって、第二次安倍政権がスタートした。爾来、安倍政権は6年を超える長期安定政権として現在に至っている。「一強多弱」と言われる長期安定政権の秘密は、ひとえに安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成功によるものと筆者は考えている。民主党政権は「物から人へ」のキャッチ・フレーズで、公共投資を抑え、人への投資を重視する政策を推進したが、デフレ脱却のための有効適切な金融・財政政策を欠き、為替が1ドル80円台の超円高を招いた。その結果、自動車・電機など輸出産業を中心として企業業績が悪化し、雇用が増えず、国内消費が冷え込み、企業倒産も増加した。当時の日経平均株価は8000円台であり、地価や消費者物価の下落が続いていた。このように、民主党政権下ではデフレが続き日本経済は停滞していたのである。
 
 そのため、第二次安倍政権では、何よりも長期デフレ経済からの脱却を最優先課題とし、政権スタート直後から安倍政権の経済政策である「アベノミクス」を強力に推進した。「アベノミクス」とは、(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)民間投資を喚起する成長戦略、のいわゆる「三本の矢」から構成される。上記(1)の「大胆な金融政策」を推進し、デフレから脱却するため、日本銀行は安倍政権と連携し、上昇率2パーセントの物価安定目標(インフレターゲット)を設定して、マネタリーベースや長期国債・ETF(上場投資信託)の保有高を拡大し、大量の通貨を市中に供給した。さらに、マイナス金利政策を行い、異次元の「量的・質的金融緩和」を実行した。その結果、民主党政権時代の1ドル80円台の超円高が,1ドル100円台の円安となり、行き過ぎた円高が是正された。それと同時に、安倍政権は国土強靭化への公共投資など、上記(2)の「機動的な財政政策」を実行し、さらに、農業、医療分野などの規制改革や働き方改革、生産性革命など、上記(3)の「民間投資を喚起する成長戦略」を推進した。

 第二次安倍政権が、これら「三本の矢」の諸政策を断行した結果、とりわけ円安効果により、自動車産業など輸出産業を中心に日本経済全体が息を吹き返し、大企業、中小企業を含め、企業業績が飛躍的に拡大した。これに連動して、日経平均株価も2017年10月2日には27年ぶりに2万4270円の高値を付け、現在でも、時に変動はあるものの、2万1000円前後をキープしている。これは民主党政権下の8000円台に比べ、2倍から3倍の株価上昇である。大幅な株価上昇で日本銀行の金融資産が拡大し、株式運用を行う年金基金会計も強化され、企業の金融資産も増加し投資余力が増えた。そのうえ、企業業績の拡大で、雇用が増え、中小企業では「人手不足」の状態となり、2018年の失業率は25年ぶりの2.2%にまで低下し、同年の有効求人倍率は27年ぶりの1.67倍の高水準となり、事実上完全雇用が達成された。それに伴い、大企業、中小企業の就労者の名目賃金も年々上昇している。

 また、主婦・高齢者など新たな就労者数が380万人増加し、すべての就労者の所得を合計した「総雇用者所得」が増大し、名目・実質共にプラスで推移している。さらに、「アベノミクス」による円安効果やビザ緩和等の施策により、外国人観光客が激増し、民主党政権時代の年間800万人から2018年には3倍以上の年間3100万人に上り、外国人観光収入は4兆円を超えた。そして、安倍政権6年間の名目GDP(国内総生産)は12パーセント増え、60兆円以上拡大した。日本経済の需給の差を示す「需給ギャップ」も9年ぶりに需要が供給を上回り、プラスに転じた。これは「アベノミクス」により消費や設備投資などが伸び、需要の回復が進んだためである。(つづく)
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